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短編
- 2007/12/20/20:50
- [ Parallel ] 短編
眠れ、知識の森の中
『あけぼのカレー』さんのギムナジウム企画に参加させていただいた作品。
虹ツナ。
閉会したので、こちらにUPします。
一緒に遊ばせていただいて楽しかったです。お疲れ様でした!!
この学園の第二図書室は変わっている。
第二と言うからには当然、第一図書室が存在する。
そこは普通の図書室であり、私語厳禁を旨とし書物の閲覧、貸し出しの為に存在する。
蔵書量は学園の存在する市のそれより多く、時折許可を得た市の職員の姿も見かけるほどである。
さて、変わっている第二図書室であるが、こちらは貸し出しが禁止されているが、私語が推奨されている。
と言うのはディスカッションを目的として作られた為である。蔵書も貴重な用例・判例等が惜しげもなく多く収蔵されいて、討論に事欠かないようになっていた。もちろん、閲覧や、レポートの資料としての利用も可能であり、室内から持ち出しが出来ない分ネット環境が整えられ、スキャンして寮の自室の端末に資料を送る事ができるようになっていた。
また雑誌のみならず更には海外から取り寄せた、日本のコミックも多く収蔵されていたりするなど、一般の図書室の概念からは想像できないほどの明るい空間が拡がっている。(日本のコミックが多いのは、日本のコミックのレベルが高いからという説、理事長が日本と関係が深いと言う説や、更には単に館長が漫画好きという俗説が流れているが真相は定かでは無い)
室内は、一見すると本棚しかないように見えるが、所々にテーブルを中心に座り心地の良いソファが配置された空間が点在している。
さりげなく他のテーブルが見えないように配置されたその空間は、幾重にも置かれた本棚が防音の役割をはたしており、あまり他の音が聞こえない構造になっていた。
議論を交わす生徒達には本の間にポツンと出来た空間に、埋もれながら言葉を交わしている様に感じるだろう。
その第二図書室の最奥のテーブルに其れは有った。
最初に見つけたのは、スカルであった。
今日は休日だったが過去の生徒会運営記録を探しに、第二に来ていて発見した。
面倒くさく面白みの無い仕事だが、書記と言う役割と生来の真面目な気質ゆえ手を抜けずにいたのが幸いしたらしい。
テーブルの上に散乱するレポート、資料に何が有ったか簡単に推測できてしまう。
何をしているんだと思いながらも、昼を少し過ぎた時間帯の柔らかな陽気の中では、それも致し方ないかと思い直しそっとしておくことにする。
普段、何やかんやと五月蝿い恐怖の先輩達が居ない。こんな機会は滅多に無い為、自分も向かい側のソファに座り暫らく見つめていたが、心地よい陽気に次第に瞼が重くなってくる。
(まぁいいか・・・そう急ぐ仕事でもない)
そう思い身体を横にすると、そのまま瞼を完全に閉じさせた。
次に見つけたのはラル・ミルチであった。
こちらは、ラテン語の資料を探す為に第二に来ていた。
ラテン語の教諭は、古典語を担当する者には珍しくユーモアがある授業で人気が有ったが、提出するレポートにもユーモアさを求めてくる為、ラル・ミルチにとっては毎回資料探しに苦労させられる相手であった。
第二ならば何か面白みの有る資料でも有るかもと、足を運んだ先で発見したのだ。
はぁ・・・と溜め息を吐き、起こす為に口を開きかける。
だが、ラテン語教諭の「楽しむ事で心に余裕が出来、人生にいろどりが生まれるのですよ」との言葉を思い出し、改めて眺める。
”楽しみ”それは以前の自分には感じなかったものだ。だが、今の自分にはそれに該当する気持ちが生じ始めている。
ソファの反対側の空いたスペースに腰を下ろし、其れを見つめる。確かにこんな時間も悪くない。
手持ちぶたさにテーブルの上に有った本を手に取ると、セネカの『幸福な人生について』だった。其れも丁度、ラテン語のレポートを書いていたらしい。
確かに、こんな時間も悪くない。改めて思うと、本を開き読み始めた。
其れとの接点を増やす事ができた事に幸福を感じながら。
ラル・ミルチの次に発見したのはマーモンであった。
およそ想像の付かない組み合わせが、一つの空間で仲良く眠っている。
マーモンは、先輩相手のレポートの代筆バイトの為に第二に来ていた。学園内で優秀な生徒の7人を指す、アルコバレーノの称号を持つ彼にとっては簡単で実入りのいいバイトだったが、面白みが無く退屈いていたところだったのだ。
そんな時に見つけた、同じくアルコバレーノの称号を持つスカルとラル・ミルチ、そして其れが仲良く眠っている光景。面白くないはずが無い。
これに残りのアルコバレーノで悪友の、リボーンとコロネロが居れば完璧なのにと思うが生憎ここには居ない。だが、この組み合わせだけでも悪くない。写真でも撮ってやろうときびを返しかけるが、カメラを取りに行ってる間に起きられてもつまらない為、暫らく観察する事にする。
普段、人前では絶対に見せない無防備な寝顔を晒すスカルとラル・ミルチ。
少々そそっかしい所の有るスカルはともかく、運動神経も良く警戒心の強いラル・ミルチが手に本を持ったまま、自分が傍に近づいても気付かず眠っている。
普段なら有り得ない状況だが、其れが介在しているのなら納得も出来る。
自分達の日常に突然現れた其れは、押し付けがましくも無く、するりと自分達の中に入ってきた。
初めて、だった気がする。自分達を単純に受け入れてくれる存在。自分達が単純に受け入れることが出来た存在。
解ってるのだろうか、それが滅多に無い僥倖だという事に。
でも、だからこそかも知れない。
其れの顔が見える位置に移動して、そのまま床に座り込む。
幸せそうな寝顔は、こちらまで暖かい気持ちにさせられる。
そして、欠伸を一つ。
こんな機会は滅多に無い。
其れの寝顔を見ながら暖かい気持ちのまま、マーモンも眠りに落ちた。
そしてマーモンの次に発見したのはコロネロであった。
(何でだ・・・?)
知り合い、しかも浅はかならぬ縁だが仲が良いとは言えない面々が、そろって寝扱けているのである。
コロネロは運動部への助っ人を終えた後、ラルと待ち合わせていた第二に来てこの光景に出くわした。
普段なら、レポートを作成し終えたラルに遅いと言われながら、新作の重火器を見に外へ繰り出すのが休日の日課であった。だがラルは眠っており、他のアルコバレーノの面々も寝息を立てている。
全く予想していなかった展開である。
一瞬フリーズしかけるが、それこそがラルにまだまだ甘いと言われる所以である事を思い出し、持ち直す。(ラルとコロネロは、よく男女の関係と間違われるが、断じてそんな事は無い。特に彼が現れてからは!)
そして気付く、彼が居る事に。
なるほど。こんな状況に至るまでの経緯までは解らないが、彼がここに居るからラルやスカル、マーモンといった面々が眠ってるのだろう。
無条件に安心できる。彼にはそんな不思議と落ち着く雰囲気があるのだ。
自分だってこのおいしい状況を逃すつもりは無い。
彼と一緒に眠れる、同室のアイツ以外には滅多に廻ってこないチャンスである。
自分も眠る。
そう決めると、コロネロは彼の近くの手近なソファを選び寝転ぶと、目を閉じた。
最後に発見したのはリボーンであった。
今日に限って、生徒会の仲間の姿が見掛けられない。
間の抜けた同室の彼も、どこにも居ない。
訝しく思いながらも、同室の彼が行きそうな場所を探していた。
(そういや、明日提出予定のレポートがまだ出来てないとか言ってたな)
そう思い、第二図書室に足を向ける。彼は極力目立たない場所を好む。
そうして足を向けた第二図書室で発見した。
同室の彼、沢田綱吉を中心に生徒会のメンバー、スカル、ラル、マーモン、コロネロがそろって眠っている空間を。
「・・・なにやってんだ」
気の抜けた息を吐きながら、人に無断でなに綱吉と一緒に寝てやがると青筋を立てる。
だが普段なら、声が聞こえただけで目を覚ますはずのアルコバレーノのメンバーはピクリともせず、惰眠をむさぼっている。
狸寝入りの気配も無い。
その理由は身をもって知っていた。
綱吉の傍は心地いいのだ。
初めは恩の有る理事長に頼まれただけだった。だが、共に過ごしている内に離れられなくなっていた。普段はダメダメなクセして、肝心な時は選択を間違えない。何度、彼の言葉に救われ、何度、彼の行動に癒されたか知れない。
他の面々も似たようなものだろう。彼らと自分は良く似ていた。
だからこそ、警戒していた。いつか彼らに綱吉を奪われるのではないかと。
だが、全員の間抜けな寝顔を見つめている内に、威嚇するのも馬鹿らしくなり、終いにはリボーン自身も空いたソファに深く身を沈めた。
(今だけ。貸してやるのは今だけだ・・・)
眠れ知識の森の中、しばしの憩いをまだ幼い彼らの上に。
虹色の子等に青のマリアの祝福が降りそそがん事を。
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・・・まったくギムナジウムと言う設定が生かしきれてない気がしますが、スルーしてください;;。
- 2007/12/20/20:51
- [ Parallel ] 短編
バレンタインの翌日
青臭い感じを目指したけど、どうなんだろう・・・。
定刻どおりに目が覚める。いつものように手早く身支度をして、キッチンに行く。 中学生の身の上ながら独り暮らしだが、問題は無い。身の回りの事は自分で済ませられるし、他者が側に居るのは煩わしいだけだ。
簡単な朝食の支度をしてエスプレッソを淹れる。
朝の一杯は欠かせない。
その時、チラリと視界の端をカラフルな色が掠めたが無視する。
毎年恒例な事だ。
チョコレート自体は嫌いではない。だが、安物や素人の手作りを好んで口に入れたいものではない。
本来なら可燃ゴミに直行させたいところだが我慢する。
不必要な物が身近に置かれているのは不快だが、この不快感を我慢すれば幼馴染みがこれ等を片付けるのを手伝いにしばらく部屋に通ってくることが確定している。
中学に入り、今まで自分しか居なかった幼馴染みの傍には邪魔な奴等が集まってきた。学校や休日に出掛けるとなると必ず彼等も付いてくるし、平日でも放課後にアイツの部屋で宿題をすることなどザラだ。
子供の頃のように、二人っきりになれる機会は少ない。
だが、この時期だけは違う。
大量に贈られたチョコレートは、とても一人で消費できる量ではない。すぐさまゴミ袋に入れようとしたオレをアイツはひき止め、「せめて一口だけでも食べてやれ」と言われ、渋々ながら承諾した。そして、勿体無いからと残りの分は出来る限りアイツが引き受け、この時期に二人っきりでオレの部屋でチョコレートを食べながら過ごすことが恒例になった。
オレがこの家に、他人を入れたがらないのを知っているため、邪魔な彼奴等もいない。
男のくせに甘いものを好む幼馴染みは、苦でもないようで逆に嬉々としてチョコレートを食べる。その姿をを思い浮かべると、顔が緩むのが解る。
…アイツの傍にはオレだけが居ればいいのに。
そんな事を思いながら、エスプレッソの最後の一口を飲み干す。
上着を羽織り、学生鞄を手に取り家を出る。
隣家の幼馴染みの家に向かう。
あの煩い二人は今日もアイツの家の前に、迎えに来ていた。
方向が違うと言うのに毎度ご苦労な事だ。
二人揃って家の前にいるのはいつもの事だが、今日は様子が違っていた。
普段ならアイツが出てくるまで騒がしく喧嘩でもしてると言うのに、今日は大人しい。
互いに別方向に顔を背けてはいるが。
「…チャオッす。山本、獄寺」
声を掛けると、ようやく二人は同じ方向に顔を向けた。
「おはようございます。リボーンさん!」
「おっす!」
いつもの挨拶がかけられる。だが、今日は二人とも何とはなしに声が弾んでいた。
いぶかしく思いながら問おうとすると、玄関のドアが開き幼馴染みが出てきた。
「お待たせ!」
今日も寝坊したのだろう。どうしようも無いくせっ毛を跳ねさせてツナがヘニャリとわらう。
その顔を見て、オレが声を掛けるよりも先に二人がツナに声をかけた。
「おはようございます沢田さん!昨日はチョコレートをありがとうございました!うまかったです!!」
「おはよ、ツナ!あれ、手作りだろ?すんげーうまかったぜ!」
その言葉に固まる。
…ツナの手作りチョコレート?
「手作りって言っても、チョコと生クリームを混ぜて型に入れただけだけどね」
何とはなしに答え、歩き出したツナを凝視する。
獄寺と山本の反応を見れば、二人がバレンタインにツナの手作りチョコを貰ったのは明白だ。
後で解ったことだが、二人に乞われ喧嘩をひかえることを条件に作ったらしい。そのついでに、風紀委員の雲雀や同じクラスのコロネロやラル、バイパーにヴェルデそしてスカルまでもツナの手作りチョコを貰っていた。
ツナの周りで貰って無いのはオレだけのようだ。
放課後、オレの家に来たツナを問い詰める。
「おいこらツナ!何で彼奴等に手作りチョコをやってオレには無いんだ!!」
「え?だってリボーン、手作りチョコ嫌いでしょ?それに、コレだけ貰ってればもうチョコなんて見たくもないかと思って」
目の前には依然、高く積み上げられたチョコレートの山が鎮座している。毎年、二人がかりでも1ヶ月はかかる代物だ。
確かにもうチョコなんて見たくもない。だが、ツナの手作りチョコなら別だ。
「そんな事より、早く食べちゃおうよ。いつまで経っても減らないよ?」
暢気な顔をしてのたまうツナに頭の中で何かが切れる音がする。
「こんのダメツナが――――――――――!!!」
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余ってた手作りチョコも全てランボやイーピンに食べられて無いと知ったリボーンはこの後、ツナにチョコをアーンして食べさせて貰って、ようやく怒りを納めたようです。
そして、バレンタインのチョコレート作りは恒例に(笑)。
ちょとリボーンの性格が悪いかもと思ったけど、思春期ど真中の子の思考なんてこんなものでしょうと。
- 2008/02/17/20:58
- [ Parallel ] 短編