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SS(Re27以外)
- 2007/06/21/00:23
- SS(Re27以外)
風紀を乱すのは
雲雀+綱吉。
現在か数年後かあたりです。
「ねえ」
珍しく、一人で居る時に風紀委員長様に声を掛けられた。(いつもなら二人以上で群れてたり、リボーンと一緒の時でないと掛けられないのにだ!)
「風紀が乱れるんだけど」
と言われて慌てて自分の服装をチェックする。
裾はズボンからはみ出し、襟元はボタンを三つ目まで外して開いてる。夏場の熱い盛りとはいえ、少し委員長様にとっては開放的すぎたかもしれない。
そう思い「すっっすみません!!!」と言い、あわてて着衣を正す。
これで大丈夫、と安心しかけた所でまたもや声を掛けられる。
「ねえ」
「はいぃぃぃっっ!!」(まだなにか!!!?)
着衣の乱れは直した。それ以外となると、姿勢か?いや、今は直立不動だ。一瞬リボーンへの伝言かとも思うが、その予想は直ぐに打ち消された。
「まだだよ、ついておいで」
(ひえぇぇぇーーー!!)
付いて行きたくはない。だが、言われれば付いていくしかない。委員長様に逆らうことイコール噛み殺される。並盛では常識である。今のところ自分が知る範囲で例外は、同じく恐怖対象である自分の家庭教師様ぐらいである。
そのリボーンが居ない今、委員長様の機嫌を損ねないことが第一である(神出鬼没な赤ん坊だからもしかしたら居るかもしれないが、救けてくれないなら居ないも同然だ)。
そんなわけで付いていく。
自分の何が”風紀が乱れる”に繋がるか分からないが付いていく。何がいけなかったのか。昨日食べた餃子か?そんなんだったら今頃、並盛ラーメン屋は壊滅している。じゃあ、何故だ!?いっくら考えてみても思い当たる節は無かった。
途中、何度も強面の風紀委員が頭を下げている横を通り過ぎる。「ちょっと気分良いかも」と思う余裕も無い。ツナにとってはただ恐怖の光景、しかも風紀委員長の雲雀さんに連行させながらである。泣きださなかっただけましである。いや、実はちょっぴり泣いていた。
これから起こるであろう恐怖を想像して耐えられなかったのである。
そして、悪い想像が駆け巡る中連行された応接室。
綱吉は最大級の恐怖の中にいた。
すなわち、恐怖の風紀委員長様、雲雀恭弥の膝の上に。
(な、な、な、なんなんだ)
何故こうなっているのか分からない。気が付いたらこう成っていた。
応接室のソファに座る雲雀の上に座っているのである。気付いたとたん、慌てて降りようとしたが、トンファーを向けられ降りる事は断念した。
こんな暴挙を侵していると言うのに、委員長さまの機嫌は悪くない。まったくもって訳が分からない。意味不明である。
挙句の果てには、草壁さんの用意した茶菓子を手にとって「んっ」と言って突き出してきたりする。
訳が分からない。
そのまま、その茶菓子のクッキーを見つめていると、眦をきつくした雲雀さんに、口の中に捻じ込まれた。
食べさせたかったらしい。
無理矢理突っ込まれた為、傷ついた歯茎から血を流しながらも咀嚼する。
菓子で怪我をするなど流石のダメツナでも始めてである。
何とか菓子を飲み下すと、もう一つ差し出される。
恐る恐る口を開けると、今度は丁寧に舌の上に置かれた。
「おいしい?」
血の味がする。
高級そうなクッキーは本来ならおいしいのだろうが、雲雀さんの膝の上と言う環境と歯茎の傷から今だ流れる血故に、血の味しかしないのだ。
だが、正直にそう答える事は出来ずに「はい」とだけ答える。
雲雀は「ふ~ん」とだけ答えると、自身も一つクッキーを口に含む。
「悪くないね」
どうやら、雲雀さんの口に合ったらしい。
ホッとしたのもつかの間、今度は紅茶の入ったカップを目の前に差し出される。
慌てて受け取ろうとすると、差し出した手を叩き落とされる。
そして、これもまた雲雀の手ずから茶を飲むと言う苦行を受けさせられる。
(何なんだこれ、新手の拷問か!!)
半泣きである。心の中で、助けてリボーン!!と何度叫んだか分からない。
だが助けは来ない。自力で抜け出すしか術は無いのか。
何とかこの状況を打開しようと、無い頭を振り絞り声を出す。
「あ、あの、雲雀さん」
そこで、ようやく雲雀が手に持っていたカップがテーブルに置かれる。
「何?」
「風紀の方は良いんですか?」
暫らくの沈黙の後「うん。今はね」と返される。
なら、この場から抜け出せるかもしれない。そう思い、勢い込んで「じゃ、じゃあ、俺はこれで・・・」と、雲雀の膝から降りかける。
だが、そう簡単には物事は進まなかった。
「何、おいしくないの?」
またもやトンファーを向けられ、硬直する。
「いえ!!そう言うわけでは!!」
しかも、何故おいしく無いに話が飛ぶのか分からない。
「じゃあ、もう少しこうしてなよ」
そう言われ、もう一つクッキーを口の運ばれる。
この訳の分からない状態を、雲雀はまだまだ続ける気らしい。
その苦行は、雲雀に連行される様を目撃者から聞いた獄寺と山本が、応接室に飛び込んで来るまで続けられた。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
終わっとけ。
どこまでも鈍いツナとバイオレンスで何となく行動する雲雀さんが書きたかった
。
うん。雲雀さんも無自覚だといいな。
+おまけ+
雲雀の膝上に居る綱吉を見た獄寺と山本は暫し硬直した後、無言で各々の武器を取り出し、雲雀に向かっていった。
そして、雲雀はようやく綱吉を膝の上から放り出すと、嬉々として応戦して場は騒然となる。
ドッカン、バッキンと騒音が響く中、ようやく雲雀の上から降りられたツナは、放り出された際に打ち付けた尻を撫でながら、巻き添えを喰わないように四つん這になって、壁際に移動する。
(・・・俺が膝の上に居る方がよっぽど風紀が乱れると思うんだけど。)
そう思うが、楽しそうな雲雀の様子を眺めるうちに、只単に二人と遊ぶ理由が欲しかっただけなのかもと思い直す。
それにしても獄寺も山本も、自分は無事なのに何をあんなに怒っているんだか。
「・・・ダメツナ」
不意に家庭教師様の声が聞こえ、ビックリする。
「えっ!リボーン!?」
いつもと同じ無表情。だがかすかに呆れをにじませた表情のリボーンがいつの間にか隣に居た。
ほんとに神出鬼没の赤ん坊である。
「何やってやがる、とっとと帰るぞ」
そう言われるが、まだ獄寺と山本が雲雀と交戦中である。
「でも、」
「ボスの状態も判らない様な部下は、ほっとけ。お前は帰って勉強だ」
そして、そのまま首根っこをつかまれて引きずっていかれる。
応接室の爆音はその後も鳴り止むことは無かった。
- 2007/09/26/23:30
- SS(Re27以外)
風邪
十年後。
胃腸風邪の話。・・・症状は穐吉の実例を元に書いてます;;。
以前から時折痛みを訴えていた胃が、急激に痛みだしたのが昼過ぎ。
その痛みが腹部全体に拡がり、気分まで悪くなりだしたのが夕方。
痛みで動けなくなり、そのまま横になって気が付いたら、夜になって熱が出ていた。
「風邪だな」
至急、呼び出されたシャマルの答えは簡潔だった。
こんなに痛いのに?下せるものはもはや何も無いと言うぐらい下したというのに、腹部に膨満感があり少しの移動で掻き回されるような痛みが断続的に腹全体を駆け巡るのだ。盲腸だと言われても納得するね、俺は。
「お前さん、前々から胃痛みを訴えてただろ。それだ。胃の炎症から菌が入ったんだ」
ああ、確かに胃の痛みを訴えていた。各方面から廻されてくる、守護者やヴァリアー、果ては虹の子供達が来る度に破壊した物などの請求書によって年がら年中苛まされているからだ。
いくらボンゴレが規模がある分収入があると言っても限度がある。年々大きくなる金額に、そろそろ遣り繰りが厳しくなってきた。世界遺産なんて壊してくんじゃ無い!・・・もうそろそろ、スカルとヴルディーのファミリーにも請求書まわして、ウチ(ボンゴレ)の連中のは給料から差っ引いても良いよね。
最近ではそれ以外にも問題が持ち上がってきたと言うのに・・・。
現実でも薄笑いを浮かべ、あらぬ方向に視線をさ迷わせはじめた綱吉にシャマルは同情的な眼差しをおくりつつ、言うべき事は言っておく。
「おら、薬を飲んでおけ。基本的に解熱鎮痛剤は痛みと熱が下がるまで、抗生剤は1週間、朝夕食後な。胃薬は毎食後にまずは2週間、欠かさずに飲めよ。それ以降は様子見だ」
薬を受け取り飲み下す。
水ですら腹に入れると痛む今の状態で、食事は自殺行為だ。
案の定、薬を水で飲んだだけでも腹が痛み出した。
本当に、これだけの薬で治るんだろうか。シャマルを信用しないわけではないが、たった二錠と一服だけでは不安になるのだ、この痛みは。
だが、だからと言って鎮痛薬に慣れるわけにもいかなかったため、我慢する。常用化してしまうとまずい。目をつむり耐えていると、シャマルに頭を軽く叩かれる。
シャマルは今、俺の主治医と相談役をしてくれている。
本来なら女以外は診ないと言い切るシャマルだが、あまりの俺の不憫さに同情して受けてくれた。
生まれてこの方、女の子との接触が握手止まりなんて哀しすぎるってね。
そりゃあ、何度か京子ちゃんやハルを抱き上げはしたが、死ぬ気時の非常手段としてカウント出来ない。
マフィアのボスになって、女性と接触する機会は格段に多くなったが握手以上に進むことはない。何故ならば、守護者達がなんやかんやと文句を付けて阻むからだ。
最初はいぶかしみながらも納得してた俺だったが、ランボが口を滑らしたと同時に皆でいっせいにしてきた告白によって理解した。
・・・俺を守る為じゃなくて、俺に女性を寄り付かせないためにガードしていたのだと。
正直、理解したくなかった。だか雲雀さんまで婚姻届(同性婚はまだ認められていません!)とトンファーを突き付け「誰にするか選びなよ」と言ってこられたら理解するしかない。
彼らの感情がLIKEじゃなくてLOVEなのだと。
(因みにクロームがかつて霧のリング戦で行った俺へのキスは、骸の指示だったことが判明した)
この時以降、俺は必死になって頑張った。
ありとあらゆる女性との付き合い方や恋愛ハウ・トゥー本を読みあさり、出会いを求めて仕事を抜け出したりもした。すぐに連れ戻されたけど。
さらには愛人を二桁以上持つ、元家庭教師のリボーンに死ぬ気で教えを乞うたりまでもしたのだ。―――――実地で教えてやると言われ、遊ばれて終わっただけだった。・・・返せ俺のファーストキス。
そういった経緯の末、シャマルは俺の主治医兼女性の扱い方の相談役になったのだ。
多大なストレスをかけてくる周りの男共に比べ、あらぬ心配をしなくていいシャマルとの時間は唯一の憩いの時間となっていた。
現在も、シャマルの配慮のおかけで綱吉が居る室内はストレッサーの無い、快適な空間を保っていた。
ドオォーン
爆音と共に部屋が震動するまでは。
(・・・・・・ッ!ッグ!・・・っ!・・・ッッ!!!)
「おっおい!息しろ!息!息をはけ!」
震動によってもたらされたあまりの痛みに、一瞬アチラ側にイキかけるがなんとか持ちこたえる。
何があったんだ!!
「方向からすると西棟からか・・・。そういやぁ、あいつら誰のせいでお前さんが病気になったか言い合ってたな」
ははは、と乾いた笑みと共に言われる。
・・・誰のせいだって?
お前等全員のせいだろ―――――――!!!
この後おこる騒動と、回ってくるであろう請求書を思うと意識が遠退いていく。腹部の痛みは薬が効いたのか、意識が他にまわったためか感じない。
喉元から込み上がってくる鉄錆のにおいも感じない。感じたくない。
ボンゴレ十代目、沢田綱吉の風邪は当分治りそうもない。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
実際の症例をもとに書いております。
・・・あれは辛かった。穐吉は胃薬は1ヶ月飲みました。
ツナは、しばらくかかりそうですね(笑)。
- 2007/10/26/20:48
- SS(Re27以外)
ある晩餐での事
綱吉とリボーンと守護者。
骸が可哀想な事になってます(笑)。
ボンゴレの守護者は案外仲が良い。
時折、その結束力が発揮されるときがある。
沢田綱吉が10代目ドン・ボンゴレに就任してから始まった習慣の一つに"晩餐をドンと守護者皆で取る事"と言うのがある。イタリアに来るまで、大人数での食事が当然だった綱吉に乞われ始まった事だ。
もっとも、皆が忙しい仕事の合間を縫ってのことなので、全員が揃う事は滅多に無いが、時間に間に合う者達でその習慣は続いていた。
その滅多に無い、ごくまれにある守護者全員とリボーンが揃った晩餐時のこと。
当然の顔で(沢田家での長年の習性ゆえか)給仕をしていた綱吉から声が掛かる。
「ご飯中だけど、なんだかジュース飲みたくなっちゃった。よそうから他に飲みたい人居るー?・・・パイナッポージュース」
「ツナヨシ君!何ですか!その意図的な言い方は!!」
チラリと霧の守護者六道骸に視線を投げかけての言葉に、気付いた骸は抗議する。
「貰おうかな。勿論、ナッポーを潰してグチャグチャにして搾った生搾りなんだろうね?」
そこへ日頃から骸と折り合いの悪い雲の守護者の雲雀恭弥が乗るものだから、骸は行儀悪く音を立てて立ち上がり声を上げる。
「雲雀恭弥!その言い方辞めなさい!!気分が悪くなります!!」
咆える骸を完全無視し、朗らかにパイナップルジュースのピッチャーを持った綱吉が雲雀に答える。
「そうです雲雀さん。例の南国植物をいまさっきミキシングして搾り取ったばかりのピチピチですよ」
ちょっぴりグロイ言い方に、綱吉に対し淡い夢を持つ骸は薄っすらと涙目になる。
「ツナヨシ君!君までなんて言い方を!いい加減僕を連想させる言い方を辞めなさい!」
そこへ雨の守護者の山本武が悪乗りし骸にダメージを与える。
「あ、ツナ!俺も搾りたてナッポー汁一杯くれないか」
ダメージを与えながら、あくまで爽やかな親友に実は腹黒なんじゃないかと疑いつつも骸への追撃は止めない。
「解った山本。むく・・・ナッポー汁一杯ね」
「ちょっと!今のは故意でしょ!いい加減気持ち悪いでしょうが!!」
更に、綱吉の意図を察した嵐の守護者獄寺隼人も声をかけ、空気は読まないが本能で動く晴れの守護者、笹川了平も元気に否定の言葉を上げる。
「十代目!俺は苦手なんで良いですよ!パイナッポー汁は」
「沢田!俺もいらんぞ!!」
「だから辞めなさい!その言い方!!」
「俺も、グレープジュースのが良いので…」
雷の守護者のランボも大好きな綱吉の為に声を上げようとするがリボーンにさえぎられた。
「ツナ」
「ん。はいリボーン」
掛けられた声に、何をとも聞かずにパイナップルジュースをコップに注ぎリボーンに手渡す綱吉。
その場に居た一同が(・・・熟年夫婦かよ)と思ったが声には出さなかった。何故なら皆、綱吉が大好きなため認めたくなかったからだ。
いろんな意味で打ちひしがれたランボはお決まりの言葉をはく。
「・・・・・・が・ま・ん」
守護者一同の思考を読んで、鼻で笑いながらも注がれたジュースを一口飲んでリボーンは顔をしかめた。
「・・・あんまりうまくねーな。このナッポー汁」
「ええ!ちょっと!おいしいですよ!ナッポー汁!!」
とうとう涙を流して反論する骸。
「骸・・・・・・(ああ、とうとう自分で言っちゃったよ)」
自分で仕掛けておきながらも、少々不憫になったがここは心を鬼にするべきだろう。
盛大に骸が壊れている中、綱吉は一人黙々と困った顔でご飯を食べている髑髏を見る。
十年たった今でも骸に付き合い、同じパイナップルヘアーをしている。
女の子なのだから、流行の髪型やおしゃれな髪型だってしたいだろうに義理堅く骸と同じ髪型を通す彼女に涙がそそる。骸の髪型があそこまで奇抜でなかったら、彼女も骸と同じ髪型を続けようなどとは思わなかったはずである。そして、それを辞めさせない骸も骸である。
今回の骸イジメは、その事に抗議してのものであった。
曰く、そのパイナップルヘアーをどうにかするか、骸自身で髑髏を説得しろとの。
数週間後に違う髪形の髑髏が見かけられたが、あの晩餐での骸イジメが功を相してかは定かではない。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
可哀想な骸(笑)。
日記から加筆修正。
- 2008/01/18/23:48
- SS(Re27以外)
耳栓は常備で
リボーンとラル・ミルチとコロネロとスカル。あと綱吉と骸。
リボーンとラルが壊れてます。キーボ注意。
相変わらず骸は可哀想(笑)。
「最近ツナの様子がおかしい」
十代目ドン・ボンゴレ沢田綱吉の手が空くまでと、執務室のソファーでくつろいでいた時の事。鉢合わせたコロネロ、スカル、ラル・ミルチが出された紅茶と綱吉手製のクッキー(それ以外の茶菓子だと暇つぶしに戦闘を始めるからだが)に舌ずつみをうっていた時にその声は掛かった。
同じく綱吉の護衛兼監視で、綱吉の入れたエスプレッソ片手に渋々ながらも大人しく他の虹の同胞と席を同じくしていたリボーンの、真剣な顔つきでの発言である。
コロネロは、本能が辞めとけと言っていたが他同胞の無言のプレッシャー(主に元鬼上官)に屈して聞き返す。
「・・・聞きたかねぇがどうしたんだ、コラ」
もっとも、聞いたとたんに後悔したが。
「もともとあいつはツンデレだったが、最近デレが少なくなってきやがった」
また禄でも無い事を言い出した。
「・・・ツンデレって先輩」
一応、ツッコミ要因のスカルが声を掛ける。
「ツナはどちらかと言うとデレじゃねえか、コラ」
飽きれながらも、普段の綱吉を思い浮かべ言ってやる。
体が成長して以来、幼馴染の黄色の同胞の発言はどうもおかしい。いや、赤ん坊の姿にカバーされ気付いていなかっただけで、元からだろうか。
ちょっぴり遠くを眺めたくなった。
「チッチッあめぇぞ。オレが甘い言葉を囁く度にわざとぶっきらぼうに返事をしたり、スキンシップを謀る度に顔を真っ赤にして抵抗すんのをツンデレと呼ばずしてなんと言う」
「・・・リボーン」
「・・・先輩」
(((それ本気で嫌がってないか?)))
三人の心が一つになった。
「なのに最近は愛の言葉を囁いても無視しやがるし、尻を撫でただけで真っ青になりやがる。そんなんじゃマジで嫌がってるように見えんじゃねえか」
((マジで嫌がってんだろうが(でしょうが)))
未だかつて無いぐらいに三人の想いはシンクロしていたが、誰もその事に気を止めるものなどいなかった。
「おい、リボーン」
「なんだラル」
とうとうラル・ミルチが切れて、リボーンの勘違い、いや妄想を止めに掛かるのだろうかとコロネロとスカルが安堵しかけたが、そう物事は上手く運ばないらしい。
「沢田も男だ。お前みたいなまっ平らで余分なもんがぶら下がってる男よりも、出るとこ出て引っ込むとこは引っ込んでるオレみたいな女が良いに決まってるだろうが」
あまりの明け透けな言い方にコロネロが目頭を押さえた。時間とは残酷なものだなあと痛感したという。
「はっツナよりも体重の重いお前が何言ってやがる。それに余分じゃねぇぞ。ツナを喜ばせるには必要なもんだ」
スカルがよろめき、頭を抑える。堂々のセクハラ発言に、背後のドン・ボンゴレを気にするが、あまりの無反応さにかえって怖くなる。
「ツナはオレの中のが喜ぶに決まってるだろうが。体力はオレのがあるからな。新居には俺が抱いて入れば良いだけの事。所詮お前にはツナとの子供も作れないだろうが」
「その分たっぷりこの俺様が愛してやるからな。何の心配もいらねーぞ」
コロネロもスカルも綱吉に想いを寄せてはいるが、リボーンとラルの舌戦には引くばかりである。二人ともここまでぶっちゃける気にはなれない。いや、なりたくない。そのあたりの常識はしっかり持ち合わせていたためだ。
顔を見合わせた後、綱吉手製のクッキーと紅茶を確保してソファーを離れる。元鬼上官と恐怖の先輩を止めるには自分達では分が悪い。
綱吉には申し訳ないと思いつつも恐る恐る振り返ると、彼の人は仕事を終えたらしく、霧の守護者と一息ついていた。
「あー、今日もいい天気だね。骸」
肘をつき、窓の外をながめるドン・ボンゴレ。
椅子の方向すらも変え、完全に室内から目を逸らしている。
骸ですら室内の応酬に若干引き気味になっていた。
「良いんですか、ツナヨシ君。アルコバレーノ達があんなこと言い合ってますが」
避難して来た二名に足を蹴られたが、言い直さなかった。
同胞を止めれなかったのならば同罪だということか。無茶を言うな。あんな奴ら、止められるか。
「ん?最近雑音が多いからね。ヴェルデ特製の雑音フィルター付けてるから聞こえないよ。もう聞きたくもないしね」
綱吉にとってはいつもの事らしい。
自身の元家庭教師と門外顧問の一員。接点は他の者より多いのだろう。
あくまで視線を窓から逸らさない姿に今までの苦労がしのばれる。
骸は綱吉に好意をしめす度に邪険にはされるが、完全に無視とまではされない。時折「ツナヨシ君ヒドイ!!」と思ったりもしたが、自分の扱いはまだ良い方だったらしい。
「…なんだか、僕よりもアルコバレーノの方が憐れな気がしてきました」
コロネロとスカルは俺達を一緒にするな、と思いながら綱吉をこの部屋から連れ出す算段をしだす。
この部屋は精神衛生上悪い。
気遣うように、ツナの顔をのぞき込めば疲れた顔ながらも笑みを見せてくれる。自分達はまだ大丈夫。
完全無視されてる憐れな同胞はほおって置いて、株を上げるべく行動しだす。
自分達だってツナが大好きなのだから!!
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
可哀想なリボーン(笑)。
日記からの移動時に、虹→ツナに加筆修正。
- 2008/01/18/23:52
- SS(Re27以外)
甘いものは好きだが、限度がある
10年後。
甘いものっておいしいけど、甘い物好きの人はほんとに限度無いですよねって話。
子供の頃から甘いものは好きだった。
お菓子の新製品は欠かさずにチェックしてたし、炭酸飲料も好んで飲んでいた。
年を取るにつれ昔の様に常に甘い菓子類を口にする、といった機会は減ったが代わりに食後や休憩時のケーキやジェラートは欠かせなくなっていた。
いかにイタリアと言えども、一般男性以上に甘いものをとっている自覚はある。
それぐらい、綱吉は甘いものを好んでいた。
甘いものならば、いくらでも食べれると思っていたのだが、何事にも限度と言うものが存在した。
目の前には、ズラリと並べられたドルチェの山。ケーキやタルト、ティラミスにスフォリアテッラ。もちろんパンナコッタやジェラートもある。
その向こう側にはにこやかな笑みを浮かべる本日の会談相手のボス。
今日は重要な商談をまとめる為の会談であった。
業界でも特に気難しいと言われる彼との話をまとめられれば、これからの他の仕事もやりやすくなる。その為しっかりと下準備をして会談に挑んだと言うのに、挨拶を交わした後すぐに通されたこの部屋ではケーキをひたすら食べていた。
会話もしては居るのだが、主にドルチェに関しての内容ばかりだ。どの店の何が美味しいやら、パティシエが変わって味が落ちたやら。その辺りの話は、綱吉も付き合えないことはないのだが、いい加減じれてくる。今日は会談に来たはずなのだ。
少しの潤滑剤として話すのは良いが、始終そんな話しばかりだと何のために来たのがかわからなくなる。
気難しいと聞いていた会談相手は、今もにこやかに甘いものの話題を話している。
目の前の相手から視線を外し、ケーキに目を戻すと気分が悪くなった。
注がれたエスプレッソを一口飲む。
流石に気持ち悪くなってきたのだ。本日、既に二十個ほどのドルチェを消費していた。
普段ならここで、年若く童顔の、ジャポーネの新米ボスをからかっての嫌がらせかと勘繰るところだが、相手の顔にはそういった負の感情は一切感じられ無い。ドルチェも俺と同じだけの数を消費していた。いや、今は二十四個目のドルチェに差し掛かり、俺にもどうぞと勧めてくる。
今回の会談相手は、ボンゴレにとっても重要な相手なため俺も我慢して相手をして居たがもう限界だ。
甘いものは好きだ。だが限度が限度があるだろ!!
翌々話を聞くと、彼はかなりの甘いもの好きだったが、今まで付き合ってくれる相手が居なかった。しかし、新たにボンゴレ十代目となった年若いボスは、幼い顔立ちをしていて甘いものを好むと聞きつけ、更には元来子供好きであるために張り切ってしまい、あの様な状態になったと言うことらしい。
確かに綱吉は甘いものは好きだ。
だが、流石に彼には付き合えない。
そのため同じく、甘いもの魔神のハルを彼に紹介した。
今では二人は仲の良い、甘味仲間となっているらしい。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
流石に付き合えなかったツナ。
- 2008/04/11/02:56
- SS(Re27以外)
Loro lo svegliarono
十年後、就任直後ぐらい。
タイトルの意味は「彼等は目覚めさせた」だったような・・・。(オイ)
『頑強な騎士に守られたリトル・プリンセス』
それが、十代目ドン・ボンゴレ沢田綱吉に対するマフィア界の認識であった。
争い事を嫌い、何事も抗争ではなく交渉で解決しようとする姿勢。たとえやむなく抗争となっても、決して戦場には現れない事からそう囁かれる様になった。
その囁きが拡がり目の前で聞かれたとしても、十代目ドン・ボンゴレが穏やかな笑みを浮かべていただけであった事も、拍車をかけた。
血生臭いこの世界にあって、抗争を嫌い最後まで交渉による解決を望む姿勢や侮られても反論せず笑っているなど、臆病以外の何者でもない。
本来なら直ぐに潰されそうなものだが、周りを固める古参の幹部達が有能で中々隙を見せず、更には最強のヒットマンであるリボーンが常に目を光らせていた為、ドン・ボンゴレ十代目に手を出すことは適わなかった。
だが、ボンゴレの領地は魅力的だ。
安定した収益、完璧に整えられたルート、闇総てを網羅していると言われるネットワーク。それらの一部でも手に入れる事が出来れば、莫大な収益につながる。
そこで考えた。
ボンゴレの十代目ボスとその守護者は腑抜けたジャポーネだ。その彼等を守っている壁さえ無くなれば、途端に脅えて偏狭の島国へ逃げ帰るだろうと。
ボンゴレのシマを狙っているマフィアに声を掛け、最大の守り手となっている最強のヒットマン・リボーンを集中的に攻めて傷付ければ事は簡単に済むと。
彼等はそう考え実行し、目論見は半分成功した。
そう、半分は。
リボーンが撃たれた。
その報が入った時、綱吉は屋敷内で現在対立しているマフィアとの交渉案をまとめている所だった。多少キナ臭い動きのあるファミリーだが、甘い汁さえ吸わせておけば問題は無いと判断しての事だ。
出来れば抗争はしたくない。
ひとたび抗争ともなれば、大なり小なり必ず血は流される。たとえ相手側であっても傷つく者が出るのは嫌だった。傷つく者がいる位なら、たとえ侮られても和解に持ち込みたい。
そのため多少相手に有利になろうとも目をつむるつもりだったのだ。
この時までは。
「誰が、いやどこがリボーンを撃ったの」
思ったより冷静なボスの返事を聞き、安心した部下は報告を続ける。
己等のボスは、部下が傷つく事を極端に嫌う。
末端の準構成員に対してですらも哀れむ自分達のボスが、側近中の側近であるリボーンの負傷に取り乱さないかと危惧していたのだ。
だが報告を続けるにつれ、ボスのあまりの静かさに不安を抱く。しかし、言及することなく報告を終えた。
それまで黙って静かに聞いていた綱吉は、手元の書類に目を落とした。
報告に出てきたファミリーが、繋がりを深めている所が現在交渉中のファミリーであった。
水面下で何かを計画している事も、報告を受けていた。
そして、何より直感が告げていた。
「わかった」
そう言うや否や、それまで持っていた書類を放り立ち上がる。
「守護者を呼んで」
現在、守護者はそう重要な任務に就いておらず、呼べば他ファミリーのランボ以外は直ぐに集まる状態であった。
部下の返事を待たずに、執務室から出た綱吉は歩を進める。
行き先は決っている。
守護者もじきに追いついてくるだろう。
屋敷の廊下を歩いている内にも、山本、獄寺と綱吉の元に早くも守護者が集まりだした。
綱吉は視線を少し傾けただけで、歩みは止めずに二つのファミリーの名を告げた。一つはリボーンを撃ったファミリー。もう一つは現在和解を交渉中のファミリーの名であった。
「潰せ」
一転したボスの態度に、そのまま綱吉に付き従っていた部下は驚き、目を見張る。それまでの、穏やかなボスとは打って変わって、表情は無く空気すらも色を失っていたのだ。彼自身、ボスに忠誠を誓ってはいたが、マフィアらしさを期待していなかっただけにこの変化には驚いた。
だが驚いたのは彼だけで、集まりだした守護者の面々は平然としている。
一番最初に綱吉に追いついていた、雨の守護者・山本武がいつもと同じ明るい声で綱吉に声を掛ける。
「交渉はどうすんだ?」
「必要無いよ」
「そっか」
間髪入れずの答えに山本は刀を肩にのせ、ニカリと笑う。
綱吉のカンは外れない。
ならば、この二つのファミリーがリボーンの襲撃に関わっているのは決まりだ。そうでなくても、綱吉の望みに異を唱える気は無かった。それは他の守護者も同じだろう。
山本への返答を聞き、少し先で壁に背を預け綱吉を待っていた雲の守護者・雲雀恭弥が口の端を吊り上げ楽しげに聞いてきた。
「傘下への引き入れはどうするの?」
「それも、必要ありません」
傘下への引き入れは、綱吉が交渉相手に求める最後の手段である。
「ならば好きに動くよ」との言葉を残し、その場から離れていった。
久々の実践に、その表情には喜色しか浮かんでいない。ましてや相手は曲りなりにもリボーンを傷付けたファミリーだ。手応えを期待しているのだろう。
雲の守護者と入れ違いに到着した晴れの守護者・笹川了平も、疑問を投げかける。彼の技は威力が大きすぎるために現在、綱吉の命により青のアルコバレーノ・コロネロの元で加減を覚える修行中であった。
「俺はまだ巧く手加減が出来んが、良いのか?」
「手加減など、しなくてかまいません」
許可を受け、早くも拳を握りだした了平の顔に憂いは無い。
その瞳に浮かぶのは、相手に対する純粋な闘争心だけだ。
しばらく進むと、どこからともなく現れた霧の守護者・六道骸が問いかけてくる。
「複数のファミリーが今回の襲撃に加担しているようですが?」
「好きにしろ。気に入れば、思う存分遊んでやればいい」
その言葉に、常に張り付けている笑みを更に深めた。
アルコバレーノ、リボーンに対する綱吉の感情を知る骸は、加担したマフィアの愚考を嘲笑う。
そして、綱吉からのお墨付きを貰った以上、加減をする気など全く無いのだろう。
「仰せのままに」
一礼をすると、そのまま姿を消した。
綱吉の右後ろに付き従う嵐の守護者・獄寺隼人が、唖然としている部下に後の処理を指示して追払うと、最後の確認をする。
「相手が降伏してきた場合はどうされますか」
「聞く必要など無い。言ったはずだ、潰せと。」
たとえ、抗争で決着をつける時であっても相手が降伏すれば綱吉は許してきた。それすらも拒絶されたのなら、そのファミリーに明日は無い。
そこでようやく綱吉は歩みを止めると、最後の指示を出す。
「再興を許すな。血族すらも絶やせ。完膚なきまでに叩き潰せ」
綱吉の額に炎が燈る。
「さあ、饗宴の時間だ」
その日一晩…否、数時間で二つのファミリーが地上から跡形も無く消えた。
それ以外にも、ボスが発狂するなどして建直す事が難しくなったファミリーが複数潰れていった。
当初、何処の行ないか解らなかったが、時間が経つにつれてボンゴレの現ボス・沢田綱吉とその守護者によるものだと判明した。
戦慄。
その一言に尽きた。
潰されたファミリーはどれも規模の小さくない、武闘派で知られたマフィアであった。
抗争ともなれば、大量の血が流れる事を覚悟しなければならないような相手がなす術も無く一瞬である。ファミリーは全滅。建物・血縁者に至るまで全て消え失せた。
しかもそれは、たった数人の所業であった。
想像を絶する行いに、初めの内は信じられなかった者達も唯一生き残った愛人達の話を聞く限り、信じるしかなかった。
今まで侮っていた、ボンゴレ十代目・沢田綱吉とその守護者の怖ろしさを。
更には、見事なまでに潰れたファミリーの穴を埋め、裏社会を混乱させること無く収めたボンゴレの処理能力を見せつけられた。
それ以来、ボンゴレ十代目を嘲笑う声は聞こえなくなった。
「リボーン、傷の具合はどう?」
「単なるかすり傷だ。絆創膏も要らないほどの、な」
「そう。よかった…」
「それよりもツナ、“殲滅”したのか?」
「ああ、リボーンを傷つけたファミリーね」
「普段はどんなに言っても強攻策をとらないお前がな」
「リボーンに傷をつけたんだ。当然だろ?お前を傷つけて良いのは俺だけだ。…たとえ、リボーン自身であっても許されないよ」
「気付いてたか」
「リボーン」
「ボスの命令は絶対、だったな」
「違える事があってはならない。そう教えてくれたのはリボーン、お前だったよね」
「勿論。なんなりと御処分を、ボス」
「そうだね、じゃあリボーン。……――――――――」
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
リボーンに対して並々ならぬ執着を持つツナ。
なんかもっと牙を剥くイメージを形にしたかったのですが挫折orz。
綱吉に「完膚なきまでに叩き潰せ」と言わせれたのでもう満足です。
趣味に走った話ですが、貰ってやってください・・・!!
- 2008/05/20/14:55
- SS(Re27以外)
手と手を取り合って
リボーン&コロネロ→スカル×ツナ
ペーパー№1からの再録。
もし何もかも捨てて逃げるとしたら、相手はスカルだろうな・・・との妄想から。
手に手を取り合って、逃げよう。
何もかも放り出して。
許される事じゃないのは解かっている。
けれども、
俺たちには、あの世界は ツ ラ ス ギ タ 。
その日、偶然が重なった。
いつもなら背後に控えてるはずのリボーンは仕事に行っていて居らず、代わりを頼まれていたコロネロも緊急の呼び出しで席を外していた。
右腕の獄寺も最近終息した抗争の後始末に忙しく、山本は日本の支部に視察に行っていた。
そんな中、カルカッサの軍師・スカルが報告書をたずさえて綱吉の元に来たのだ。
カルカッサとは表向き対立してはいるが、水面下では密に連絡を取り合いマフィア界のパワーバランスを調整していた。
ほとんどの構成員には知らされていないが、側近の者たちにとってはスカルの訪問は珍しい事ではない。むしろリボーンとコロネロ、ボンゴレの両腕と称される獄寺と山本が綱吉の側にいない今、スカルの訪問は歓迎された。
外部からの訪問者がいる時は護衛に雲雀や骸が呼び出されるのだが、綱吉の影響でアルコバレーノに対する信頼が他のファミリーよりも強い綱吉の側近達は両名の呼び出しをしなかった。
アルコバレーノ・スカルならば問題は無いと。
そのため、綱吉とスカルは二人っきりで逢う時間ができた。
二人っきりの執務室で、目が合った瞬間に解かり合った。
綱吉の切望を。
スカルの渇望を。
普段ならばリボーンやコロネロが警戒を怠らないため、二人が直接言葉を交わす機会は無く、また二人が本心をさらす機会も無かった。だか今、この部屋には二人以外には誰も居ない。偽る必要も遮る者も何も無かった。
二人とも、感じていたのだ。常に張り巡らされていた監視の目を。
綱吉を縛り、離さない存在を。言葉さえも遮り、触れ合う事を良しとしなかった二対の存在を。
だが、今は居ない。
彼等の代わりとなる者も、側にいない。
こんな機会は二度と無い。
その事は、二人が一番理解していた。
今を逃せば、目を合わせることや言葉を交わすことも望めない。
これが最初で最後の機会なのだと。
二人はどちらともなく歩み寄り、手を伸ばす。
互いの手を繋ぎ握り締めると、扉を開けた。
その報告を受けた時、リボーンは本部への帰路の途中であった。
心のどこかで感じてはいた。いつかこんな日が来るであろう事は。
その為、警戒して少しでも二人が接触する機会を減らしていたのだ。
常に綱吉の傍に控え、威嚇していた。
もっとも、今回の事でそれも徒労に終わったのだが。
この十年で、綱吉はリボーンの読心術を回避する術を身に付けていた。だが、常に一番綱吉に近い位置で彼を見てきたリボーンには分かった。
綱吉がマフィアの世界に疲れ、安息を求めている事を。
その安息を、スカルに求めていた事を。
リボーンは知っていた。
綱吉の苦しみも、怒りも、喜びも、救いも。
しかし、リボーンはリボーンでしかない。誰よりも闇に染まり、誰よりもアルコバレーノであった。マフィアの世界から抜け出す事など到底出来ない。そのため、リボーンには綱吉を縛り付ける事しか出来なかった。
綱吉が自分と同じ想いを決して返してくれないだろう事も解かっていた。それでも、手放す事は出来なかった。初めから、綱吉を自分から解放させると言った選択肢も持つ事は出来なかった。それは、コロネロも同じだった。
ボンゴレという檻に閉じ込め、逃げ出せないようにする。
自分の庇護という名の束縛に、それでも綱吉は疲れた笑みをこぼしながらも感受してくれていた。リボーン自身、綱吉にはかなり辛い思いをさせている事を自覚してはいた。綱吉の優しさに甘え、綱吉の気持ちに気付かない振りをして。
今まで、良く耐えていたと思う。
だがそれでも、スカルと逃げた事は到底許せるものではない。
本部に到着すると、コロネロが既に綱吉探索の指示を出していた。
到着したリボーンに気付くと、コロネロはすぐさま謝罪した。
「…すまん」
「お前が謝る事じゃねえ」
二人して綱吉の執務室に向かう。
そこには誰も居らず、置手紙一つ無かった。
本来なら、ここで綱吉が出迎えてくれるはずだったのだ。
だが、綱吉はいない。
スカルと共に、何もかも放り出し、古くからの友人も捨て、彼を必要とする者達を振り切り逃げたのだ。
「コロネロ、行くぞ」
「ああ。カルカッサには連絡済だ。スカルの捕獲には、生死の条件は付いてないぜ、コラ」
「あいつの事は気にするな。ツナの奪還のみに集中すればいい」
「そうだな、コラ」
目的は唯一つ。
綱吉を、自分達の手に取り戻す。
虹は大空に架かるものだ。大空なくしての虹など存在する価値は無いのだから。
「ダメツナが・・・」
俺達から、逃げられると思うな。
- 2008/06/17/22:10
- SS(Re27以外)
星降る夜に
コロツナ 10年後。
コロネロお誕生日と1万Hit御礼をかねて。(一万Hitリクにコロツナを頂きました!)
・・・ごごご、ごめんなさい;;。(しかも今2万overだちゅうに)色々と時間が無かったのです;;。
7月7日、七夕。
本来ならこのイタリアの地には、七夕を祝う風習は無い。
だが、ボンゴレの現ボスがジャポーネということもあり一部の純粋なジャポーネファン(ボンゴレには意外と日本オタクが多い)と熱狂的なボスファンの支持の元、今年もボンゴレ的地域交流七夕大会が開催された。
このイベントは“地域交流”と銘打ってるだけあって、当日は地元市民も参加して開場や料理の準備を行う。そうして、大会が始まる頃には構成員と地域市民との間に新たな絆が生まれ、よりいっそうの結びつきが生まれる。
また、構成員の家族も参加できるためそちらの絆も深めているようだ。(毎年、構成員の家族からの志願者が続出するのは困りものだが)
いまや七夕はボンゴレを代表する一大イベントになっていた。
呑めや歌えの無礼講。
一般市民と構成員等の交じり合ったもじどうりのドンチャン騒ぎの中、ボンゴレのボスである沢田綱吉はそっと席を立った。
このくらいになればボスも何も関係無い。皆勝手に騒ぐだけになる為、主催が席を外しても問題は無い。後は何かあれば慣れた古参の幹部が収める為、気を使うボスなどかえって居ない方が良い。
そう判断してでもあるし、秘密の恋人の下に迎いたかった事もある。
そう、秘密の恋人。
誰も、親友にすら打ち明けていない恋人が綱吉には居た。
別段隠すつもりでは無かったが、自分も相手も色恋に疎い性質であったためか付き合いだしてから、身体の関係を持つようになった今でも気付かれる事無く続いている。
鋭いリボーンあたりは時折物言いたげに見つめてくる為、知っているのかもしれない。
だがあえて、聞かれぬことに答えるつもりは無かった。
人気の無い、ひっそりとした屋敷内を奥へと進む。
普段ならこの時間でもメイドや構成員が忙しく立ち回っている時間だが、今は七夕の方に行っており閑散としている。
そんな中を足早に歩き、目的の部屋に急ぐ。
その部屋は屋敷の奥にしつらえられた客室で、普段は滅多な事では使われない特別な相手の為の部屋であった。
ここまで来れば、外で行われているイベントの喧騒も聞こえない。
ゆっくりと扉を開けると、相手は既に来ていた。
「コロネロ」
声を掛けると、手に持っていたグラスを上げ、挨拶される。
テーブルにはコロネロ用に用意させた軽食と酒類が並べられている。そう手をつけられてない事からコロネロも今来たところだと察せられた。
お互い忙しい身だ。
約束していても逢えない事も多々ある。今日は運が良いほうだ。
席に着くと、彼が飲んでいたものと同じものを差し出される。
ウィスキーのロック。
酒豪の父の血を受け継いだ綱吉もまた、アルコールに強い。アルコバレーノ達のワク並とまでは行かなくても、ザル並みには飲める。
コロネロから受け取ると一気にそれを飲み干した。
「そんなに一気に飲んだら流石に酔うぞ、コラ」
呆れたようにコロネロに声をかけられる。
だが、次の綱吉の言葉にそれ以上の制止は紡がれなかった。
「酔っちゃ、駄目?」
一瞬、息を止めた後ニヤリと笑う。
「・・・上等だ」
ボンゴレのボスとして教育をされてきた綱吉は、普段滅多に酔うことは無い。常に危険と隣り合わせの綱吉にとって、身体の機能を低下させる事は死に繋がる。その彼に、酔った身体を預けられるという事は最大限の信頼に他ならない。また、今宵のそれは、綱吉の遠まわしの誘い文句でもあった。
それを理解した瞬間、場の空気が変わる。
それまでの淡々としたものから、熱を孕んだものへ。
自然と互いの身を寄せ、唇が重なる。
やわらかな、だが存在感のある肉厚な舌が綱吉の咥内に入り込むと、うっとりと目を閉じた。。
コロネロとの口付けに酔いながら、綱吉は考える。
この、コロネロとの関係を。
告白はコロネロからだった。
いつもの執務室、いつもの報告の時に告げられた。
初めは冗談だと思っていた。それほどまでにコロネロの態度はいつもと同じで、変わりが無かった。その頃にはコロネロを憎からず想っていた綱吉は、動揺したが何事も無かったかのようにその時は流した。
金色の美しい髪と綺麗な青い瞳を持つコロネロは、まさに神に愛されたかのような美青年に育っていた。しっかりと付いたしなやかな筋肉に、強い意志の宿った眼光は不敵な笑みさえも魅力的となる。
綱吉には無い、全てのものを持つ青年。
そんな彼が、女性にモテない訳は無い。
事実、彼を巡る色恋の話が自身の下にも届いていた。
だが、次に会った時にもコロネロは淡々とだが綱吉を口説いた。
その次も、そのまた次も。
頻繁に訪れるようになったコロネロに周囲が疑問を抱き始めた頃、綱吉はコロネロを受け入れ恋人となった。
コロネロに根負けする形での交際スタートと成った訳だが、もとより好意を寄せいていた相手だ。関係が深くなるのも時間の問題であった。
また、想いが強くなるのも。
今でも、自分などがコロネロを独占して良いのかと言う疑念が沸く。
だが、その思いと裏腹に彼に対する執着は増すばかりであった。
意外だったのは、二人の関係が周囲に悟られなかった事だ。
もしかしたら、自分の奥底にある罪悪感により周囲に悟られないよう無意識に立ち回っていたのかもしれない。
コロネロを独占する罪悪。
だが、綱吉は彼と別れることは出来なかった。
コロネロと愛し合うことで育った想いが、それを諾とはしなかったのだ。
もう、誰に何と言われようと別れる事は出来ないだろう。
ようやく互いの唇を離すと、窓の外が明るくなりかすかな振動が室内を揺らす。
日付変更カウントダウンの花火が打ち上げられたのだ。
もうすぐ、今日が終る。
今日、この時に花火が打ち上げられる事を知っているコロネロは、気にするそぶりを見せずに綱吉の首筋に唇を落として行為を進めようとする。
それに慌てた綱吉は、萎えそうな腕に力を込め急いでコロネロを引き離す。
今日はもうすぐ終ってしまうのだ。
そうなる前に、伝えたい言葉がある。
「コロネロ、お誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとう」
プレゼントも何も、用意するような間柄ではない。
事実、二人とも必要なものは全て得ていたし、不要なものは持ち歩く事は出来ない。だからこその、最上の言葉と思いを。
夜空に花火が響く中、二つの影が重なり一つとなる。
今宵、逢う事を許された二人のように。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
本当はコレ、筋肉フェチのツナで裏にも繋がるはずだったんだけど、時間が無かったので普通のコロツナ(?)になりました。
うん。筋肉フェチのツナは良く考えたら一番書きたいのが裏の部分だったんだよね。
というか、一緒くたにするなって言う理性が活を入れたのです。
因みに当初1万Hit記念になるはずだった筋肉フェチツナは個人的にリクエスト主のかんたさんにこっそりひっそり書いて捧げに参ります。・・・そのうちに・・・。
- 2008/07/07/23:59
- SS(Re27以外)
キスで始まる疑惑と懊悩
十年後ぐらい、リボラン?とツナ。
以前少しの間UPしていたものに、少しリボツナ色を強くしてみました。
少々危険表現があるため、読む際は気をつけてください。
2007/12/19 初稿
2008/07/12 加筆修正。
ボンゴレ・ファミリーのボス、沢田綱吉は溜め息を吐いた。
いつもの午後、いつもの様に書類を片付ける傍ら、執務机の前に置かれたソファーの上では、いつもどうりにリボーンとランボの喧嘩が繰り広げられていたからである。
喧嘩、否、痴話喧嘩を繰り広げていた。
毎回のことなのでいい加減慣れてきたが、何故に毎回綱吉の目の前で痴話喧嘩をするのか、この二人は。
いや、解っている。
綱吉の警護を請け負うリボーンが、執務室のソファーに座っている事が当然と言う事も。そこにボヴィーノ・ファミリーとの橋渡しとしてランボが綱吉の元を訪れ、リボーンと会い喧嘩を始めたと言う事も。
いつものパターンだ。
二人が恋愛関係にあることを綱吉は知っている。
いつ頃からか、ランボのリボーンを見る視線の中に熱が混じりはじめ、戸惑う綱吉を面白がるようにリボーンが目の前でランボにキスを仕掛けた。
これで気付かない方がおかしいだろう。
それ以来、隠す必要も無いとばかりにランボが来る度の執務室での痴話喧嘩は恒例になった。
内心ランボがいざという時の仲裁役兼盾を綱吉に期待して、この場を離れないという側面もある。実際、綱吉の前以外での喧嘩は、大概喧嘩別れで終わるらしい。
以前、ランボが来たからとリボーンに休憩を促したら、当のリボーンより先にランボが強固に反対したため疑問に思い、こっそり後で聞いたら白状した。
子供の頃からランボは、綱吉を自分の保護者として認識している節が有った。
幼い頃から共にすごし、イーピンとのケンカの仲裁から日常の世話、ランボの行動にキレる隼人を宥めたり、リボーンの暴挙をいさめたりしていたためだろう。
そうしてランボは、綱吉の前で思う存分暴れてリボーンに突っかかり、綱吉の前で玉砕し泣き出したり十年バズーカを撃ったりをしていたのである。
逆に、綱吉の感知しない二人のケンカを知らないぐらいに。
そして、その認識はランボの保育係がフウ太に変わり、綱吉がボンゴレ・ボスになり、リボーンとランボが恋情を挟んだ関係に変わった後もこうして続いているようである。
良い迷惑だが。
それにしても毎回、よく飽きもせずに喧嘩するものだ。
些細な事でランボがリボーンに怒る。
険悪な雰囲気になる前に綱吉が仲裁をする。
そして、綱吉の仲裁を受け入れたリボーンが面倒そうにランボにキスをして仲直り。
これが毎回のパターン。
リボーンがランボにキスをする際、こちらに目線を向けて目尻を下げるため、リボーン自身も綱吉の仲裁を望んでいたのが解る。
面倒な二人である。
しかし、ランボもランボだ。つい数分前まで涙を流すほど怒っていたのに、リボーンの口付け一つで元通り。
ハッキリ言って、根本解決になってないんじゃないか?だから毎回同じ事をくり返すのか・・・。
また、溜め息を吐く。
「ツナ。溜め息を吐くと幸せが逃げるぞ」
唇の端を上げたリボーンに言われる。
「マフィアのボスに成った時点で、俺の幸せは逃げてるよ」
そう言って天井を仰ぐと鼻で嗤われた。
あぁ、もう今日は休みにしよう。こんな状態で仕事をしても能率は下がるだけだ。こちとらマの付く自由業。少しばかりの融通どうとでもなる。優秀な右腕に感謝。
「今日はもうおしまい。二人ともコーヒーで良い?」
ダメツナめ、と聞こえたが無視して机の上を片付ける。銃弾が飛んで来ないという事は休むのに問題は無いという事だ。改めてリボーンの許可が下りたところでキッチンスペースに行き、慣れた手つきでエスプレッソを二人分いれる。
コーヒー=エスプレッソのこの国に来て、一番最初にリボーンに叩き込まれたこの技術は、下手なバリスタよりも自信がある。
だがどんなに長くこの国に住んでも、リボーン達のように濃いエスプレッソに慣れないため、自分の分は紅茶にする。
淹れ終わったコーヒーと紅茶、茶菓子にハルお薦めのクッキーを持ってソファーに行く。おっと、砂糖も欠かせない。
テーブルにカップを置いて、二人の向かい側に腰を下ろす。
仲直りのキスの後のため、ランボは機嫌良くピンク色のオーラを振りまいてる。本人は隠しているつもりだろうが、上気した頬と潤んだ瞳を見ればまる解り。
デレデレ一歩手前のツンデレめ。目の前で痴話喧嘩されるのも気になるが、これもこれでちょっとウザイ。
「ランボ、キス一つではぐらかされて、良いの?」
紅茶のカップを手に取り、半ば呆れながら聞く。
ちょうどエスプレッソに砂糖を入れる途中だったランボは、その姿勢のまま真っ赤になってうろたえだした。
「え・・・あ、その・・・ボ、ンゴレ」
今までリボーンと熱烈なキッスを交わしていたと言うのに、この反応はどうだろう。落ち着こうとしたのか、そのまま砂糖を入れ忘れたエスプレッソを飲んでさらに涙目になっている。
動揺するぐらいなら、目の前でキスなんてしてんじゃないとも思うが、ランボだから仕方ないだろう。
そのまま見つめていると、顔を伏せながら上目遣いでこちらを伺ってきた。
ちょっとかわいい。
リボーンが虐めたくなる気持ち、解るなー。
「オイ」
リボーンの不機嫌そうな声に、我に返る。
ごめん。
そこで、ようやく消え入りそうな声で、ランボが答えてくれた。
「だって・・・リボーンのキスは、上手すぎて、何も分かんなくなるんだもん」
”分かんなくなるんだもん”て、お前、幾つだよ・・・。未だに未熟な自称ヒットマンの成長を本気で心配しかける。
だが、ランボの台詞に、別の部分で好奇心が頭をもたげた。
性関連の教育は、大まかな知識はリボーンに教わったが、実地は高級娼婦のお姉様方に教わっていた。(その内の何人かは今でも綱吉の愛人を務めている)
だから、リボーンの技巧は知らなかった。
「そんなに上手いんだ・・・」
そう呟いてカップを置くと、興味が引かれるままに席を立つ。
リボーンの座る側のソファの肘掛に腰を降ろし、腕をリボーンの首に絡める。
ここまですれば、綱吉の行動の意図は解るだろうが、拒絶はされなかった。
次に思い切って唇を触れ合わせると、かえって面白げな視線を帰された。
(大丈夫かな…)
最近では綱吉から触れる事も多少許されるようになったが、幼い頃の記憶ゆえ緊張はする。ましてや、こんな近くで触れ合う事は初めてである。
リボーンの様子をうかがいながら、舌で普通より体温の低い彼の唇をチロリと舐める。
開かれた。
良かった。拳は飛んでこない。
安堵して目を閉じると、互いの舌を絡み合わせた。
隣でランボがうるさかったけど無視した。たまには、目の前で男同士がキスするのを見る側にまわってもらってもいいだろう。そして、もう少し控えてもらえるとありがたい。
そうして数分。
ちゅう
と、音をたてて唇が離れる。
間を銀糸がきらめいた。お互いの息は荒い。
チッと舌打ちすると、唸るような声でリボーンが聞いてきた。
「テメエ、どこでこんなテク覚えて来やがった」
「どこって、接待?」
俺の技巧も中々なもんでしょ?高級娼婦のお姉様方と接待相手に培われたキスは伊達じゃない。
でも、さすがリボーン。今まで受けた誰よりも上手かった。確かに、まだ初心そうなランボなんてひとたまりも無いだろう。
そう納得し席に戻ろうとするが、腰が抜けていて立てそうになかった。
・・・さすがリボーン。
「簡単に男にキスしてんじゃねえよ。勘違いされたらどうすんだ」
苦々しそうに言われる。悔し紛れに言ったんだろうが、さすがにそれは無い。
「まさか!普段は男となんて仕事でなきゃしないよ!今回は何て言うの、好奇心?」
俺の言葉に、リボーンの動きが止った。
好奇心、て言ったのが気に障ったのかと思ったが違った。
「仕事って、どういうことだ」
そっちか。
「どうって、そのまんまだよ」
あんまり喋りたい事ではない。だが、目線で詳しく話せと言われたので、仕方なく口を開く。ちょ、リボーン。話すから、銃を出すのはやめてくれ!!
「会合とかで同盟ファミリーのボスやなんかと食事するだろ。その後、飲み直そうってことになって、大きなベットの有る部屋に連れ込まれる。で、まずキスされるから答えなきゃいけないだろ?リボーンもいってたじゃん。とりあえず、寝首掻かれないように注意はしてヤっとけって」
据え膳喰わぬは男の恥とまで言われた。
「男、相手にか?」
リボーンの硬い声音に身を強張らせながら、正直に答える。
「大概、そうだけど」
実を言うと、愛人との逢瀬以外では男性相手のが多かった。基本はノーマルだが、ファミリーの為と思って我慢したのだ。
「・・・今までずっとそうだったのか?」
思案するような表情の後に、いつに無い真剣な声で聞かれる。
「そう・・・だけど、何か問題でも有った?」
リボーンは教え子の不思議そうな反応に、奥歯をかみ締める。
問題?おお有りだ。揃いも揃って同盟ファミリーの野郎や、今までの取引先の相手がドン・ボンゴレである綱吉を慰み者にしてやがったなんて。
リボーンはこれでも綱吉を大事にしてきたのだ。マフィアと言う裏社会の中でもツナ本来の健やかさが損なわれないように細心の注意を払ってきたといっていい。それがいつの間にかリボーン以外の人間に綱吉が穢されていたのだ。
イラつかない訳が無い。
半ばキレかかた脳内でリボーンはすばやく、近日中に実行すべき暗殺リストと暗殺内容を組み立てる。綱吉を一度たりとも辱めた相手を生かしておく訳にはいかない。
だがどうして今までオレが気付かなかった?
そう思いながら、必要なことを聞き出す為に口を開く。
「今だに有るのか?」
綱吉は眉をひそめながら、話を続ける。
「今は断れるぐらいには力を付けてきたからね。どうしてもって時にしかないよ」
きもちは良いが、あまり気分の良いものでない。誘いを断れるぐらいの力を付けるため、必死になって頑張ったのだ。
「出来無くはないけど、さすがに頻繁にオッサンを抱きたいもんじゃないもんね」と続けるとリボーンの目が見開かれる。動揺を悟らせるなんて珍しい。
「抱く?抱かれるじゃなくて?」
そんな言葉に、綱吉はリボーンのすぐ傍だというのに大声で喚いてしまう。
「なんで俺が抱かれなきゃならないのさ!!誘ってきたのはあっち!だから誘われた俺は抱くしかなかったの!お前だって言ってたじゃないか。誘われたら抱いてやるもんだって!」
耳元がうるさかったが、今はそんな事問題じゃない。
ああ、確かに抱いてやれと教えた。・・・女相手に対してだが。
リボーンは胸を撫で下ろしつつ、どこで教育を間違ったか悩んだ。
いや、ある意味有ってた。
むしろ教え子の成長を喜ぶべきか。
何だこの目頭に込み上がる熱は。
ランボは隣の席で真っ赤になったり真っ青になったりに忙しい。
とりあえず、ボンゴレ・ファミリー(同盟ファミリー&取引相手)は今日も安泰らしい。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
はい!
と言うわけで、攻めツナでした(笑)。
途中までリボ様と一緒にヒヤヒヤしていただけたら、しめたものですv。
リボランはこの辺りくらいが限界かな・・・;;。
- 2008/07/12/01:04
- SS(Re27以外)
entri la casa nuova
何年後か、就任式の直後。
山本・獄寺→ツナ+リボーンみたいな感じ?(自分で疑問符付けるな)
ヨーロッパの風習では、新郎は新婦をお姫様抱っこで新居に入れるんだそうです。
それから妄想。
新居入場
ボンゴレ十代目の就任式が終った。
ある日を境に、綱吉は自らの意志でボンゴレのボスになる事を望むようになっていた。
元から九代目は、十代目である沢田綱吉の就任を望んでいた。
前守護者達も九代目の意志を支持していた事と、リング戦にてザンザスを倒した事により反対意見は出なかった。
だが、幹部は守護者のみではない。
それらの者達の承認を得る為に、渡伊前から本部よりの指示を受けて実力を着々と示していった。
その結果、綱吉は幹部、門外顧問、暗殺部隊全ての承認を受けて、本日正式にドン・ボンゴレ十代目に就任したのだ。
就任式は滞りなく行われた。
実際にはリングの継承は済んでいるため形式だけの継承であったが、内外に知らせる意味も有るため疎かには出来ない。
今日、この日を迎えるにあたって綱吉はそれこそ不眠不休で動いていた。
幹部全員が承認したからといっても、ボンゴレという大きな組織だ。日本人である綱吉に不満を持つものや、代替わりのこの期に乗じてボンゴレを落としいれようとする輩の鎮圧に駆けずり回っていたのだ。
それらも今朝方とは言え制圧し終え、その足で就任式を終えた。
式とその後の懇親会を終えて帰りの車に乗り込んだ直後、綱吉は崩れるように眠りに落ちていた。
綱吉の厳しい家庭教師であるリボーンも、常ならばなんとしても叩き起こしている所だが、苦笑一つを落として綱吉を眠らせている。
リボーンも今日までに、どれほど綱吉が頑張っていたのか知っているのだ。
それこそ、忙しさに眠る事もままならず、運良く睡眠時間を取れたとしてもあまりの辛さにひっそりと枕を濡らすだけに費やした事があることも。
それでも綱吉は、泣き言を一言も言わずに耐えた。
耐えて今日という日を迎えたのだ。
これぐらいのご褒美など、可愛いものだ。
綱吉と守護者達を乗せた車がボンゴレの屋敷に着いた。
これから綱吉は今までの仮住まいではなく、ボンゴレの屋敷に住むことになる。
正式なボスとなり、全ファミリーの全てを背負う。
重圧はこれまでの比では無い。
これが終わりではなく、これからが正念場である事も判ってはいた。
それでも、今、この時だけは安からにいて欲しかった。
リボーンはひっそりと嗤うと、綱吉を起こさずにそのまま抱き上げボンゴレ邸に足を踏み入れた。
「なぁ、獄寺」
綱吉を軽々と抱き上げてボンゴレ邸に入っていったリボーンを見送った後、思わず隣に並んでいた獄寺に声をかける。
「何だ」
「確か結婚式を終えた新婦って、新郎にお姫様抱っこされて新居に入るんだったよな」
イタリアに渡ってくる前の講義中、何らかの拍子に聞いた気がしたのだ。
「それがどうした」
「・・・いや、いい」
肯定の言葉を聞き「やはり」と思うが、獄寺の反応があまりに薄い為、自分の思い過ごしかと思いかける。
だが隣を見ると、獄寺のこめかみが引きつっていた。
獄寺も気が付いていたらしい。
「かなわねーのなー」
綱吉も成長し、今や立派なマフィアのボスだ。
他の誰か・・・自分達ですら触れていたら綱吉は目を覚ましただろう。その辺りの危機感知能力は徹底的に仕込まれていた。
だが、その相手がリボーンであった時には適用されない。
リボーンが気配を消すのに長けていると言う事も有るだろうが、綱吉には超直感があるのだ。たとえ気配で判らなくとも気付くはずである。
だが、実際には綱吉は起きる気配も無く、リボーンに抱かれて行った。
絶対的な信頼。
それが二人にはあった。
幼い頃を同じ家、同じ部屋で過ごした二人。
無論、自分達だって大事な時を共にすごした。だが、違うのだ。
教師と生徒。またそれ以上の言葉にするには難しい、絆とも言える物が二人の間にはあるのだ。
・・・それを利用してのアレはやり過ぎだとは思うが。
「よし、呑みにいくぞ。ごっくん」
「誰がごっくんだ、誰が!」
そう言いつつも、二人は同じ方向に歩き出す。
ついでにそれまで黙っていた雲雀や了平、そしてランボもひっそりとだが付いてきた。女性であるクロームはメイドに連れられていったが。
皆、このままの気分でいるのは、やるせなさ過ぎたのだ。
今はまだ、いや、もしかしたら一生適わないかも知れない。だが、自分達だってツナを想う気持ちは人一倍有るのだ。ただの友人のままでいる気は無い。
今回は完敗だが、いつかその内超えてみせる。
そう、決意を込め一歩を踏み出した。
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え?リボ様は確信犯ですよ?
- 2008/07/26/23:20
- SS(Re27以外)