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Novel
- 2007/06/21/23:18
- Novel
真夜中に想う
現代。
リボーンの綱吉に対する想い。
2008/07/13 ssより統合。
夜中にふと目が覚めた。
ハンモックの下方から聞こえる、規則正しい寝息。
時計の秒針が刻む音。
それ以外に音は無く、部屋の外にも他者の気配は感じない。
遠方からも狙われてる様子は無い。
ならば、只単に目が覚めてしまっただけだろうと、目覚めた瞬間の警戒を解く。
だが念の為にと、ハンモックを降りツナの状態を確認する。
長年の暗殺者としての習性は、直らないものだ。
だが、自分の二人目の生徒にして、ドン・ボンゴレの十代目が確定している彼を守る為には、必要な事でもあった。
ツナ。綱吉。
自分が護り、導くべき存在。
幸せそうな顔をして寝ている、未来のマフィアのボス。
ダメでダメでどうしようもないこの教え子だが、苛立ちと共にどうしてもいとしさを感じずにはいられない。
傍に居た年数ならディーノのが上だ。
自分と同等と認めて、背を預けることが出来るコロネロにも感じてことの無い安心感。
そう、安心するのだ。
ツナと居ると。
何気無く向けられる、信頼に満ちた眼差し。
やわらかく微笑み、掛けられる声。
怒りながらも履かれる、苦笑した笑み。
嬉しげに名前を呼び、駆け寄ってくるその姿に満足する。
だから、一歩下がり彼との距離を開け、教師の仮面を被る。
そうしないと、自分の足元から何かが崩れていきそうになるからだ。
まだ、駄目だ。ツナが一人前になり、独りでも自身を護り、家族を護れるようになるまで、まだ自分が折れるわけにはいかないのだ。
ツナ、ツナ。いとしい教え子。
今だけは、安らかに眠れ。いずれ来るべき未来の為に。
たとえお前が望まなくとも、もう歯車は廻り始めてしまった。
だから、今だけは。
一つ額に口付けを落としハンモックに戻る。
(悪い夢など見なくていい。)
そう願い、ツナの寝息を聞きながら、二度目の眠りに落ちる。
自分の想いに蓋をして、彼の最強の家庭教師である為に。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
リボ様の想い。
小説で、ディーノさんには数年カテキョーしていたと有ったので。
惹かれはじめっちゃった感じですね☆。
- 2007/06/21/23:27
- Novel
欲求不満のある一日
散々、イヤだイヤだとゴネて拒否していたボンゴレ十代目に就任して一ヶ月。
「リボーン」
豪奢な執務室と年季の入った執務机には慣れないが、最強の家庭教師様にマンツーマンで教えを請い、ボスとしての英才教育を知らず知らずの内に叩き込まれていたおかげで、会話しながらでも仕事は順調に片付いていく。
「何だ」
たった一つの問題を除いて。
「腹減ったんだけど」
現在の綱吉のスケジュール管理をしているリボーンは間を置かずに答える。
「喜べツナ、次のスケジュールはアステーリア・ファミリーとの会食だぞ」
執務机の前に置かれた応接用のソファーに座り、リボーンも書類のチェックをしている。
「・・・食えんの」
ペンを進める音と、紙をめくる音が止む事は無い。
「会食だぞ。食いたきゃ食えばいい」
綱吉はペンを走らせる手を止めずに照準した後、ため息を吐く。
「アステーリア・ファミリーってアレだよね。ウチが代替わりしてから不穏な動き見せてる・・・」
「えれーじゃねーか、ツナ。よく覚えてたな」
リボーンに褒められる事は滅多に無いが、こんな事で誉められても嬉しくない。
「教えられる度に、ヒトデのオブジェやらマッズイヒトデ料理やら食わされればね。そりゃあね、厭でも嫌なイメージが定着するよ」
”アステーリア”とはヒトデの事である。
当時の状況を思い出すと、空腹もあいまって胸から厭なものがこみ上げて来そうになり、一瞬喉を詰まらせる。
因みに、目の前の先生は一口も箸をつけなかった。
「また食わせてやろうか」
出会ってから10年。死ぬ気でリボーンの読心術を回避する術を覚えた綱吉だが(そうと知れた時、誉めるどころか盛大な舌打ちをされた)、表情の豊かさと付き合いの年数故に未だに大まかな思考は読まれてしまう。
「遠慮します!・・・あぁもう、アステーリアって事はまた、ごはん食べられないじゃん!!」
綱吉のような就任したばかりの新米ボスは、敵が多い。
敵対ファミリーやギャッバローネ等のよっぽどの親綱吉派以外との食事は、毒殺などの危険が多い為少し、手を付ける程度にするように家庭教師様に教わっていた。
「だから、食いたきゃ食えばいいぞ。ま、せいぜい一ヶ月間腹を壊すか、数日血反吐垂れ流すかくらいだろう」
そうなったらそうなったで、また一歩おいしい食事から遠のく事になる。仕事は待ってはくれないし。
「遠慮します。それ以前に、慣らされた量以上の毒を摂取したら、お前に死ぬような目に遭わされんだろうが!!」
もう既に、一度経験済みである。
「わかってんじゃねーか」
そう言い、直ぐ手に取れる位置に置かれていた愛銃を撫でるリボーンの表情は楽しげだ。どうせ、前回の事でも思い出しているんだろう。
「ああもう!いい加減、まともな食事ぐらい取らせてくれよ!朝食は幹部連中との顔見世を兼ねた打ち合わせで終わって、昼食は敵ファミリーとの会食。そして夜は人の入り乱れるパーティー!物がまともに食える機会なんて無いじゃん!合間の仕事は減ってくれないし!就任してからここ一ヶ月、まともに食べたのなんて日本から持ってきたカロリー○イトぐらいで、腹へって死にそうだよ!!!」
イタリアに着てから知った事だが、守護者はボス直属の部下として存在し、ファミリーの幹部はそっくりそのまま先代のを引き継ぐ形になるらしい。唯一、獄寺だけは血縁ということもあって、次期アンダーボスとして幹部入りしていが。
その為、ファミリー幹部との親交はボンゴレを動かす上で、重要な位置を占める。
就任する前は、もう少し余裕が有った。
今よりも時間的に余裕の有った獄寺くんも、気を使って軽食を用意してくれたり、山本も日本食を作ってくれたりしてここまで空腹になることはなかった。
ピンときて、非常食を大量に購入しておいて良かった。超直感万歳。
「カ○リーメイトなんざ持ち込んでやがったのか。まあ、今回はしかたねぇ。許してやるが、次からは、市販のもんでも気をつけろ」
「ありがとさん。そこまで気にしてたら餓死しちゃうよ!」
常日頃、口に入れる物には気を付けろと言われている。日本で購入した物とはいえ、気にしてはいたのだ。咎められなかった事にホッとしつつも、だが洒落ではなく餓死しかけた事への反論はさせてもらう。
「安心しろ、ブドウ糖の点滴の用意は出来ている」
点滴かよ!
あまりの答えに、ちょっぴり字が歪んでしまった。
「その前に食わせてよ!イタリアって言ったら、ピッツァの国だろ!スパゲティーの国だろ!!あつあつで程よくモッツァレラが溶けたマルゲリータや、卵でふわふわしたカルボナーラはどこいったんだよ!!」
「街行きゃ有るな」
そりゃそうだ。
「行かなきゃ無いんなら、無い同然だよ!!鳥レバーやオリーブのペーストが乗ったクロスティーニ、ポルチーニとトマトのパスタ、木曜日のニョッキ!今ならフルコースでもいけるね!!いい加減何か食わせろ!!」
先日、最後のカロリーメ○トは食べ終わってしまっていた。
限界である。
ついには、ペンを走らせる手を止めて、家庭教師様に向かって喚いてしまっていた。
そんな綱吉の様子を見て、リボーンも書類をめくる手を止める。
「・・・・・・解った。そんなに食いたきゃ、特別に俺様の特性ヴュルステルを食わせてやろう」
ヴュルステル。たしかソーセージやホットドックの事だったはずだ。
この際食べられるなら、何だろうと文句は無い。
「本当に!?リーボン特性ってとこが気になるけど・・・」
「安心しろ、クリームソースもたっぷりと添えてやるぞ」
「ぶっ!!」
そこまで聞いて、特性ヴュルステルなる物が何を指すのか気付きたくないが、気付いてしまった。
「さぁ来い!めいいっぱい食わせてやるぞ!」
「ちょっっ!待て!!それ、違うのだろ!!!」
思わず立ち上がって突っ込むが、家庭教師様は止らなかった。
「今なら、出血大サービスで俺様手ずから食わせてやるぞ」
そう言うと、手に持ってた書類をバサリと置いて立ち上がったリボーンは、スーツの上を脱ぎ捨て近づいてくる。
「遠慮します!!っっくんなよ!」
本格的に身の危険を感じ逃げようとするが、座り心地はいいがバカでかいイスに阻まれ、逃げる事が出来ない。
「遠慮すんな、オレとお前の仲だろうが」
「いつそんな仲になったよ!」
リボーンとの距離はどんどん縮まり、わずかな抵抗の末捕まり、耳元で答えを聞く羽目になってしまった。
「お前を精通させた時から」
「ギャー!!!!言うな!!マジ止めて下さいリボーン先生!!!!」
思わずマジ泣きして、許しを請う。
「そんなに嫌なのか?」
「お願いです、すいませんでした。点滴でも何でも我慢しますから!!」
もうこうなったら、なりふり構ってられない。
「・・・分かった。そんなに上の口が嫌なら、下の口で」
「何でそうなるかな!!!!」
全くである。
だがそこはリボーン先生。綱吉の下を手早く脱がしにかかる。
「ちょっ!!リボーン待っ!!」
ここまで来て、流石におかしいと思った綱吉は、リボーンの手を握りこれ以上動かせないようにする。
「チッ」
「チ、じゃねえよ!どうしたんだよりボーン、いつもはこれ程あらかさまじゃ無いだろ」
今までも、軽い冗談のセクハラ発言や下ネタを言われた事は有った。が、実力行使にまで出られたのは始めてである。
綱吉の真剣な眼差しに、しぶしぶながらリボーンは口を開く。
「・・・半年だ」
「は?」
「お前と同じで、オレは半年程まともな睡眠を取ってねえ」
半年というと、本格的な渡伊の日時が決まった頃だ。
「・・・マジで」
「マジだとも」
その頃からリボーンはイタリアと日本を行き来し、過激派組織の暗殺やら代替わりの為の根回し、守護者の教育から綱吉の護衛と最終調整に寝る間も無く奔走していた。
「獄寺が仕事を覚えれば、もう少し休めるんだが、今はな」
本来なら、ボスのスケジュール管理や指示書の作成は、アンダーボスの仕事であるのだが、獄寺はその仕事の引継ぎの途中であり、全ての作業には手が回らない。
唯一、ボンゴレの全てを把握でき、信頼できるリボーンがその代わりをしているのが現状である。
「そっか」
守護者達も、前守護者から教えを請うたりとそれぞれが全力を尽くしている。
今の状態はギリギリであり、休めとは言いたくても言えなかった。
「だからな、ツナ」
「うん」
「成長期の貴重な睡眠時間削って尽くしてるオレに、バージンくれてもバチは当んねーと思うぞ」
「いや、やっぱりいっぺん休んで来い!!!」
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
食欲・睡眠欲・性欲の三大欲求。
・・・ほんと、色々とゴメンナサイ。
でも、書いててすっごく楽しかった。いいなキーボ。書きやすい。
- 2007/09/05/04:15
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Dutchmans pipe
10年後。
ツナとその愛人さん。・・・根底にはリボツナかな?
2008/07/13 ssより統合。
散々、拒否しまくって嫌がって、それでも最後には納得して座ったマフィアのボスの座。
最初の数年には抗争も多々あったが就任五年目となってくると、流石にまとまってきた。
久しぶりに有った、他ファミリーとの大規模な抗争もリボーンの手を借りずに終結させる事もできた。
そしてプライベートの方で無理矢理に押し付けられた愛人数人。
初めこそぎこちない関係であったが、付き合うにつれ打ち解けてきて最近は良い関係が続いていた。
そう、リボーンに泣き付かなくて良い位に。
(最初こそどうしていいか判らずに、よくリボーンに泣き付いていた)
あのダメツナが良くここまで成長したものである。
まさに順風満帆。家庭教師様様である。
立派なボンゴレ10代目としてリボーンから独り立ちするのも後少しである。
だが、そんな生活に少々の蔭りが出はじめた。
久々の大規模な抗争と言う事で、しばらくプライベートな時間が取れないことがあった。長くボス業を続けていると、時折有る事である。
愛人達はその辺りを良く理解していたし、綱吉自身も贈り物だけはマメに送らせてはいた。何も問題は無いと思っていた。
そしてようやく時間が取れ、愛人達の元に訪れる機会が出来たその日にそれは起こった。
バシンッッ!!
気が強いが、闊達なアンジェラに会った時だった。
近づいて抱擁しようとした途端、頬を引っ叩かれた。
唖然としていると、彼女はそのままキビを返して去っていった。
その目許は濡れていたように見えた。
その後、何度も連絡を取ろうとしたが返事は無く、理由を聞く事は出来なかった。
そして次に会ったのが、おとなしいが聡明なエレナ。
彼女もまた、それまで笑顔で迎えてくれたのに、近づいた途端に眦を吊り上げ「arrivederla」と言われた。
彼女ともそれっきり。
他にも可愛らしいミーナ、料理上手なジュリエッタ、気さくなラウラ、情の厚いクラウディア。彼女達にも同じ様に振られてしまった。
いや、クラウディアに至っては、会う以前に「さようなら、お幸せに」との手紙と共に今まで送ったプレゼントがすべて送り返されてきた。
訳が判らなかった。
彼女達には平等に、誠実にお付き合いしてきたつもりだ。
新しい愛人が出来れば、皆に必ず紹介した。
贈り物と手紙は、リボーンに教わったように欠かさず送ったし、会える時は他の女性の香りは一切落として相手だけを大切に扱った。
マフィアのボスには有るまじき丁重さで彼女達を愛し、彼女達もそれに答えてくれていたはずだった。そう、今まで上手く行っていた。
数ヶ月前までは自分は確かに彼女達に、真剣に愛されていたはずだった。
自分の日常に変化など無かった。いや、良い変化は有った。
リボーンが自ら育てたという月下美人を、わざわざ執務室と自室に飾ってくれたのだ。抗争中に外に出られない綱吉の為に、少しでもいろどりをと飾られたそれは綱吉の目と鼻を楽しませてくれた。
リボーンにそんな気を使われたのは初めてで、一人前のボスとして認められた気がして嬉しくなった物だ。
それぐらいの変化しかなかったはずなのに、それなのに何故。
そして、とうとう綱吉はリボーンに泣き付いた。
愛人全員にそっぽを向かれ、どうしていいか判らなかったのだ。
この時ばかりはリボーンは優しく慰めてくれた。
終いには、一緒に寝てくれて、新しい愛人を紹介してもくれた。
何度も何度もリボーンに感謝して、やっぱり自分はリボーンが居なきゃダメツナなままなんだと、思い直した。彼から卒業なんてまだまだ無理な事だったんだと思い直した。
だから、綱吉は知らない。
愛人達に振られた理由を。
綱吉は知らない。
執務室に飾られた、月下美人の香りが自身に染み付いていた事が原因だと。
綱吉が纏う甘い香りに、自分達にも紹介されない”本命の女性”の気配を感じ、自ら身を引いたのだと。
綱吉は気付かないまま、今日もリボーンの腕の中で涙を拭う。
慰めてくれるリボーンに感謝しながら。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
Dutchmans pipe=月下美人
一晩で萎れちゃうんですが、すっごい香りが強いんですよ。しかも大きな鉢になるとると、何日かにまたがって咲くのできっと綱吉にはしっかりバッチリ匂いが染み付いてたんだと思います(笑)。でも綱吉は慣れてしまって気付かない。
愛人は今までかけらもさせなかった女性の気配(花の香り)を感じて、怒り半分嫉妬半分、それと、抗争中にでも会いに行くぐらい本気の彼女が出来たのならと、身を引いたんです。そう思っといてください;。
- 2007/09/26/23:25
- Novel
夢は願望を写すもの
数年後。
ツナ→リボ。夢の話。
2008/07/13 ssより統合。
夢を見た。
いや、夢は時々見る。良くある事だ。
だが、問題はその中身だった。
登場人物は俺とリボーン。そこまではいい。
何故だか二人とも素っ裸。
その時は何の疑問も持たなかった。なにせ夢の中だ。ぼやけた視点に、ぼやけた思考のまま物語は勝手に進行していく。
そう、勝手に進行して行ったのだ。
俺の意思、関係無しに。
そして全てが終わった後に、唐突に目覚めたのだ。
目覚めてキッカリ十秒後、真っ青になったね。
(・・・なんてこった!!!)
その場で叫ばなかったのが不思議なぐらいだ。
だが、幸運な事に俺は叫ばなかったし、一緒の部屋に寝ているリボーンも起きなかった。
幸運な事に。
起きていたら、思考を読まれて今頃本気で川の向こう側に行ってたはずだ。
何の川か、もちろん三途の川に決まってるじゃないか。
そんなあらゆる意味で衝撃的な夢だったのだ。
どんな夢かって?
・・・・・・あれだ。
二人っきりで、素っ裸。
そう、もしどちらかの性別が違っていたら、普通の事だが、同じだったら大問題のアレだ(そして今まさに大問題)。ほら、解るだろ。もにゃもにゃってやつ。ええい!ナニだよナニ!セ、セ、セ、セ・・・・・・・・・ほら、何だ、セ、で始まって、スで終わるやつ・・・うん。
男同士のもにょもにょなんて知りたくも無かった。でも、幸か不幸か数日前にゲラゲラ笑いながら話していた、クラスメイトの猥談(俺だってもう16だ興味だって有る)の中に、男同士での仕方が有ったのだ。
そう言えばその後、獄寺くんと山本がその話していたクラスメイト達をシバイてた。何か有ったんだろうか。や、今はそんな事はどうでもいい。クラスメイトの哀れな末路なんか。
今問題なのは、その知ってしまった”男同士の仕方”を夢で見たという事だ。
しかも、俺とリボーンとでだ。
確かに最近すくすくと成長してきて、真っ白な肌に黒い艶やかな髪が整った顔に映えて、赤ん坊の頃からは想像も付かないほど(まだ3歳の幼児にこう表現するのはどうかと思うが)綺麗になった。女装するともろ美少女らしいが、リボーンがどんな変装したってしボーンにしか見えない俺には只のリボーンの女装にしか見えないのだが。
そんな最近の美少年っぷりに、老若男女問わず顔を赤らめている光景を幾度となく見てきたから、あいつが恋愛の対象として見られるのは何となく理解できる。愛人だって0歳の時から居た奴だし。
だが、俺がそうかと言われると甚だ疑問が生じてくる。外見だけに惑わされる他人はともかく、俺はあいつのスパルタ加減を一身に受けているのだ。惑わされろと言う方が無理である。
だが、見てしまったのだ。あいつともにょもにょしている夢を。
しかも押し倒されていたのは俺だ。(リボーンが男に押し倒されてるのなんて想像も出来ないけど)
リボーンが起きていない事を幸いにと、まだ早い時間にも関わらず普段からは想像も出来ない静かさとスピードで身支度をした俺は、迎えに来てくれるはずの獄寺くんと山本を置いて(ごめん!二人とも!!)一人学校への道を歩きながら考えていた。
普通だったらあんな夢、男同士、しかも一回り下、スパルタの家庭教師が相手のなんて見る事はないだろう。
俺ってば、実はリボーンのことが好きだったのだろうか、だからあんな夢を…!とも考えたが、あまりの有り得なさにとっととその案は却下した。
有り得ないだろう。
じゃあ、何でか。
考えて考えて、ダメツナの無い頭を振り絞ってでた結論が、たまたま聞いてしまった”男同士の仕方”があまりにもショッキングだった為、深層心理に残っていたそれが夢に出てきてしまったんだろうというものだった。
きっとそうだ。いや、絶対そうだ。そして感謝。
うんやっぱり獄寺くんと山本、猥談していたクラスメイト達をシバイてくれてありがとう。
そうして、一件落着するはずだった。
学校に着いて、購買で買ったパンを朝食代わりに食べながら、後から来た獄寺くんと山本に謝った後、受けた授業中にリボーンの事を思い出すまでは。
そう、思い出してしまったのだ。
「あ、これリボーンに教わった事ある」と思ったとたんに思い出したリボーンの顔と夢のもにょもにょ。
それだけならまだいい。だが、ふとリボーンの事を考える度に夢のもにょもにょまで出てきてしまうのだ。授業中や獄寺君達と話してる間ですらも。
何度か真っ青と真っ赤を繰り返した為、心配され早退を進められたが謹んで辞退した。こんな状態で家に帰ってリボーンに有ったら、何をされるか分かったもんじゃない。
このままだと家に帰れなくなってしまう。
そうして悩んで悩んで悩んだ挙げ句、こっそりと同級生の黒川花に相談してみることにした。黒川なら、同年代の友人より知識が有りそうな気がしたのだ。(もちろん相談は差し障りの無い表現でした)
そうして紹介された夢占いの本を読んでみると、そういった、性行為を示す夢は、相手ともっと親しくなりたいと思っている時に見る夢だと書いてあった。
安心した。
あいつを愛や恋や、ましてや性欲の対象で見てないと解って安心した。
朝の段階では完全否定した事だが、流石に何回もあの場面を思い出した後では心配になっていたのだ。
リボーンの事をもっと知りたいと思っていたのは事実だったので、余計に本に書いてある事が納得できた。そしてようやく、今朝の夢を忘れる事が出来たのだ。
リボーンともっと親しくなりたいと思うのは事実だが、無理な話だった。
彼は綱吉に対して家庭教師としての位置を動く事は無かったし、決して綱吉との距離を縮めようとはしなかった。
そして自分は諦める事に慣れていた。
諦め忘れる事にして、安心して綱吉は家に帰っていった。
ツナはそれ以後、夢の事を思いだす事は無かった。
硬く何かを誓うように、決して思い出すことは無かった。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
ツナ→リボで終わるべきか、ツナ→←リボにするべきか迷った挙句にツナ→リボに。
- 2007/10/06/06:45
- Novel
compleanno!
歳の割りに、接吻止まりの清い二人です。
10月14日
今日は綱吉の偶数才での誕生日。
久々の休みでも有るため、綱吉は常日頃不足になりがちな睡眠時間を得るために、惰眠をむさぼっていた。
何故今日が休みかというと、13日つまりリボーンの誕生日を俺と合同で祝い、翌日14日、俺の誕生日を祝日としてファミリーの休日に当てるのが、十代目を正式に襲名してからの慣例になっているからである。
表向きはファミリーの慰労の為となっているが、実態は二日間もドンパチ騒ぎ(冗談でなく重火器も持ち出される)をした挙句に翌日から業務を再開する負担に耐え切れずに、綱吉がリボーンに拝み倒したのである。
最も奇数才に行われる伝説のボンゴリアン・バースデーパーティー(何故頭に”伝説”が付くかと言うと、リボーンが復活させるまで廃れていた行事だからだ。因みにその事実を俺は最近知った。コンチキショウー!)の際には右腕らがハリキリ、規模が大きくなり大騒動となる。その後始末に駆り出される為、あまり意味は無いのだが、確実に二年に一度は廻ってくる定休日と思えば慰められる。
ボンゴレのボスと言う座は、思っていたよりもハードで休みが無い。こんな些細な楽しみでも無いとやってられない。
幸か不幸か、10月に誕生日のあるボンゴレの主要メンバーは皆、奇数才になる年が同じため、伝説のボンゴリアン・バースデーパーティーは今年はやらなくて良い。
その為、今年は身内だけのささやかなパーティーのみですんだのだ。
・・・修繕費が億一桁で収まったのは御の字だろう。
そんな訳で、綱吉は自身の誕生日に惰眠をむさぼっていた。
ミ゙ャオ
こんな声が聞こえるまでは。
綱吉が現在休んでいるのは私室である。
面倒ゆえに、執務室隣の仮眠室を改造した質素な部屋であるが、仮にもボンゴレ・ファミリーのボスの私室である。
入室許可も側近中の側近である守護者かリボーンにしか出されておらず、更に言えば綱吉の許可無く自由に出入りできる権利を持っているのはリボーンだけである。セキィリティーは万全で、アルコバレーノでも敗れないように日々強化がなされている。
そんなボンゴレ・ボスの私室に響いた声と生き物の気配に、綱吉は飛び起きた。
凶悪な家庭教師に成された教育は伊達では無い。
いくら深い眠りに落ちていても、他者の気配には敏感に反応するようになっていた。・・・反応できなかった際に架せられる修行が怖いからであるが。
そうして飛び起きた先に在ったのは、子犬ぐらいの大きさの薄茶色の生き物と、それを小脇に抱えた家庭教師様。
ミ゙ャ~ウ
リボーンの手の中の生き物が声を上げる。
・・・・・・・・・・・・。たっぷり十秒。眠気もしっかり吹き飛んだ。
「リ、リ、リ、リ、リボーンさん!!!」
思わずどもってしまったのは致し方ないだろう。
リボーンの小脇に、見覚えのあるお尻と尻尾が揺れていたのである。
「俺の名前すらまともに言えないのか?このダメツナが」
そう言って、リボーンがベットに近づいて来る。
その際に小脇に抱えらて居た薄茶色の生き物は、リボーンの腕に抱えなおされ全貌があらわになる。
「そ、そ、その手に抱えてるものは何ですか!!」
首にピンクのリボンが巻かれたその生き物は、少し自由の利く体制になると好奇心が旺盛なのか、手足をバタつかせリボーンの手から逃れようと動き始めた。
あ、オスだ。
「お前への誕生日プレゼント」
即答された。
が、そう言う事が聞きたいんじゃなかった。いや、誕生日プレゼントて!ええ!!
昨日貰ったんじゃなかったっけと思ったが、そんな事よりも手足をバタつかせて愛嬌を振りまいているその生き物の事のが重要である。
実際に見た事は無かった。成長した姿なら見た事はあるが、まだこのくらいの大きさの子供の姿はテレビのドキュメンタリーやなんかでしか見た事は無い。
「ダメツナめ、誰に何を貰ったかぐらい把握してやがれ。・・・なんだ、うれし過ぎてまともに喋れないのか?」
確かに、まともに喋れない。
ただし、うれし過ぎてではなく、リボーンの腕の中であがく生き物の正体に驚きすぎて。
「それ、ライオンじゃないか!!!」
人工での繁殖が容易なため絶種の恐れは無いが、野生の種は絶滅が危惧されていて、ワシントン条約で取引が規制されている動物。
そのライオンの子供が目の前に居るのでる。
その、居るはずの無い生き物の出現に思わず動揺しても罰は当たらないだろう。
だって、ライオンである。しかもオス。
こちらの動揺を物とせず、リボーンが分かってんじゃーねか、と言い「Buon compleanno!」と、そのライオンを差し出してくる。
ミ゙ャウ?
あ、可愛い。
身体をよじらせ小首を傾げるその姿に、思わずキュンとする(ドキュメンタリー番組を観るのは綱吉の数少ない娯楽の一つである)が、それどころじゃない。
「ワ、ワシントン条約!レッドリスト!!」
思わず単語のみを叫んでしまったが、十年以上傍に居る家庭教師様は汲み取ってくれた。
「安心しろ。出所は言わねーが、問題は無い。許可はもちろん取ってある。ワクチンも摂取済みだ」
さすがリボーン。綱吉の気付かない所まで手をまわしてくれる。
出所の言及は避ける。裏側の商売をしていると、扱わないまでも情報は入ってくるものである。
綱吉が動物愛護の精神が強いため、ボンゴレは扱いはしないが闇ルートに密猟した野生動物が流れてくるのは良くある事である。潰したマフィアから保護した動物達も、出来る限り系列の保護団体に廻し、自然に帰している。
綱吉の行動を良く知るリボーンの事だから、この仔ライオンはどうしても自然環境に戻すのが無理だったのだろう。
そう考え、ようやく落ち着きを取り戻しリボーンと目を合わすと、若干顔をしかめながら答えてくれる。
「・・・パイプカットされちまってたからな」
種を残せない生き物は、自然環境では意味が無い。また、動物園などでも歓迎されないだろう。
ほれ受け取れと、再度差し出されたライオンを今度は素直に受け取る。
重い。でもこれが命の重み。
自分達が負うべき業。
「そう、深く考えるな」
思わずリボーンを見る。
「とりあえずの相棒ペットはライオンって、決めてたからな」
そう言われ、ニヤリと嗤われる。リボーンの目には愉悦の色しかない。
「あー!!」
そして、思い出す。まだ中学だった時に、動物園に皆で行った時の事を。
相棒ペットの事なんて、今言われるまですっかり忘れていた。
ついで、思い出しリボーンのボルサリーノの上に居るレオンを見ると、こちらを気忙しげにのぞいている。
綱吉の腕の中で遊んでいる、仔ライオンの事を気にしているらしい。仔ライオンの頭を撫でてやると、レオンは目を細めた。どうやらレオンは、相棒ペット同士、気にかけていたらしい。
「リボーン。・・・覚えてたんだな」
「当たり前だ。オレを誰だと思ってる」
ピンと額を弾かれる。
うお。リボーンのデコピンは痛いと言うより、頭がぐらぐらする。
「・・・最強の家庭教師様です」
「いつまでたっても家庭教師離れできない、ダメ生徒のおかげでな」
「おっしゃるとおりで」
未だに”立派なボンゴレ十代目”には程遠い自身に恥じ入りつつ、こっそりと笑みを浮べる。
本当なら、もう一人立ちしても良い頃だろう。
事実、九代目からはリボーンとの契約の終了を打診されていた。だが、それを断っているのは綱吉自身である。リボーンもその事に気付いている。
それでも、リボーンから家庭教師の終了を言い出さないのは、彼なりの優しさなのだ。
綱吉が、今の二人の関係から一歩踏む出す覚悟を決めるのを、待っていてくれてる。
教師と生徒の関係が無くなれば、新たな関係を築くしかない。そして、新たな関係の方向性は示されていた。綱吉はそれを受け入れた。
後は家庭教師の契約を終了させ、リボーンとの新たな関係を築くだけである。
その覚悟を決めるのを、待っていてくれてる。
「リボーン、ありがとな」
仔ライオンを持ち上げながら、二重の意味を込め言う。
「・・・ダメツナめ」
そうして先ほど弾かれた額に、派手な音をたてて口付けを一つ落とされる。
頬が思わず赤くなる。
尻尾をせわしなく動かしながら、自分の胸に素直に抱かれている仔ライオンを照れ隠しに見つめる。
膝の上に乗せてやると暫らくじゃれた後、丸くなって眠りだした。
レオンも、リボーンから降りてきて一緒に眠りだしたのを見て、二人して顔を見合わせ笑う。
数少ない貴重な休日は、まだ残っている。
どちらとも無く唇を合わせ、吐息を交ぜ合う。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
子供の内に去勢されたライオンに、鬣が生えるかどうか知りません。(オイ)
この後、このライオンが登場するかどうかも未定;。
・・・律儀に、標的42で言った事を実行に移すリボーンが書きたかっただけです。
実は先生、密かに探してたんですよ(笑)。
とりあえず、先生、ツナお誕生日おめでとう!!
- 2007/10/14/23:59
- Novel
ある休日と悩み
15年後ぐらい。リボツナ?←虹
・・・ダイラタンシー。片栗粉の実験を見て、一回使ってみたかったのです;;。
久々の休日。綱吉は屋敷の敷地内に立てられたガラス温室にいた。
ドン・ボンゴレとなって5年経った頃。
組織内は安定してきたが、他のマフィアからはジャポネーゼのお坊っちゃんと侮られ、ろくに出歩く事が出来ない。そんな時、綱吉のためにリボーンが用意してくれたのが、この温室である。
それ以来、屋敷から出ることの出来ない時や、安心して外を歩きたい時に重宝している。
何重もの防弾・耐熱ガラスとその間に流し込まれた、衝撃を受けると硬化するダイラタンシー流体を流し込んだその壁は、透明な見た目とは裏腹にミサイルですら跳ね返す強力な防御壁らしい。
実際、コロネロの拳でも叩き割られる事はなかった。
贈られた当初は、中学の頃に片栗粉の実験で遊んだ、次代に期待されてる素材と言われていた素材が、こうして開発・応用して身近に使われている事を感慨深く思ったものだ。
専用の庭師が丹精込めて綱吉の為だけにしつらえられた温室は、控えめながらも美しい花を咲かせている。
寒くなり始め、外出には厚手の上着が欠かせなくなってきたが、この温室の中では薄手のシャツ一枚で十分。
テーブルの上には、ドルチェにスコーンから、フルーツやクロスティーニと紅茶が並んでいた。
心地よい良い日差しの中、誰もが幸せだと思う空間の中にいた。
だが、こんな快適な空間の中に居るというのに、綱吉の憂いは晴れない。
腰が痛い。
今日のこの日が休日だというのに。・・・休日だからこそだろう、昨晩遠慮なく家庭教師様が掘ってくれたからだ。
こういう時に、普段は抑えてくれているんだなと解るが、全然嬉しくない。
腰が痛いため、運ばれたソファーの上に寝転びながら、行儀悪くクロスティーニを食べる。
最初は、朝食を用意されていたのだがまともに座れない綱吉を見かねた執事のスティーブンスがソファーを運ばせ、つまんで食べられる軽食を用意したのだ。
自分の都合のために、いちいち多人数の使用人がこの場を整えてくれる。未だに慣れないが、今のような状態ではありがたい。
出来れば動きたくない。と言うか、動けないのだ。
休日を部屋のみで過ごすのは流石に嫌だったので、せめて日に当たるためこの温室に移動してきたのだが、来るだけで精一杯だった。
自分と家庭教師が、どうしてこういう関係になったのか綱吉は覚えていない。
気が付いたら押し倒されていて、抱かれていた。
行為に全くといっていいほど痛みは無く、気持ちいいだけなのも問題だった。
え!?俺ってそんな素質あったの!?!?と絶望しかけたが、家庭教師の「ダメツナ、オレのテクのおかげに決まってんだろ」と言われ、テクってどんなんだよ!?とか言ってる内に話は反れた。何で自分が抱かれたのか解らないまま、また抱かれて、いつの間にか当たり前になっていた。
流石の自分もこれはヤバイだろ、と思いもしたが、女性を相手にするよりも楽で面倒が無く気持ちいい分、うやむやにしてしまった所もある(翌日の腰のだるささえなければ、だが)。・・・リボーンと関係が出来てから、愛人をつくれだとか見合いしろだとか言われなくなって一安心してしまのもある。
しかし、今更ながらに思う。何故、相手に不自由無くむしろ選り取り見取りのリボーンが自分を抱くのか。
男、しかも30を過ぎたおっさんを相手にするよりも、女性(しかも極上)を相手にする方が断然いいだろうというのに。
どうせなら二桁の大台に突入しそうな愛人さん達の所に行ってこいと言いたかったが、肝心な本人は今朝から仕事に旅立ってしまっていて居ない。
明け方近くまで綱吉を苛んでいたというのに、相変わらず化け物並みの体力である。
(しかも出かける時、鼻歌まで歌ってやがったぞ!)
もういい加減、おっさんの域に達しようと言う相手に何をやってんだか。て、ナニなんだが。
若気の至り?
まあ、あの時期は何でも興味有ることに手を出したがる時だと納得しかけて、要らない事まで思い出した。
ここ最近、知り合いからいろんな物が送られてきているのだ。
真っ赤なバラの花束に始まって、アクセサリーに宝石、高性能のサイバースコープ、新鮮な海産物の詰め合わせに(タコは入って無かった)、無味無臭のホレ薬、無料暗殺請負券などというのもあった。
これが誕生日なら解るのだが、何の変哲も無い日に思い出したように送り付けられてくるのだ。
特にザンザスからのアクセサリーと宝石(しかも女物)はどうしろと言うのだ。
唯一有効活用出来たのは、スカルからの海産物詰め合わせぐらいだろう。守護者も呼んで、皆でおいしくいただいた。
虹色の子供たちの奇行(ザンザスは元からだ)に頭を悩ませていると、コロネロの来訪が告げられる。
この温室は防犯の為、ファミリー内でも庭師と執事、守護者にリボーン以外の入室は制限されている。ファミリー外にいたっては在り得ないのだが、唯一コロネロのみが温室をつくる際の強度実験に協力してもらった為、立ち入る事が許されている。
あらかたの食事は済んでいたので、コロネロを案内するように指示すると、寝そべった体勢から身体を起こしてきちんとした姿勢になる。
腰のだるさはまだ有るが、流石にコロネロの前でだらしない格好をするわけにはいかない。
執事がテーブルをセットし直した所で、見慣れた大柄な体躯が現れる。
「よお」
「久しぶり、コロネロ」
以前会ったのは、ボンゴレがマフィアランドの警護を担当した時だから実に半年ぶりだ。またちょっと背が伸びたようである。
コロネロが腰を落ち着けたところで、タイミング良くスティーブンスがエスプレッソと新しい紅茶を持ってくる。
「元気してた?」
久しぶりな事と、リボーンが居ないからとで他愛無い話が続く。
ちょっとしたことで笑い有ったり、さりげなく情報提供したり、さりげなく情報提供されたり。
いつの間にかすっかりマフィアのボス役が板についてしまったのは悲しいが、コロネロとこんな会話が出来るようになったのはちょっと嬉しい。少しは彼らに近づけた気がするからだ。
アルコバレーノは決して、マフィアというカテゴリーの中から逃れる事は出来ない。
マフィアの業は深い。その深い業を負う彼らに近付く為には、自らもこの世界に入る必要があった。
強くて、悲しくて、寂しい子供たち。
一度、その心の闇を知ったら見放す事など出来なくなった。
だから思う。彼らに近づきたいと。お前達は一人でもなんでもない。
みんな、傍に居る。
マフィアの世界から逃れる事は出来なくとも、休む場所くらいにはなってやれる。
だから、堪えるな。
綱吉がマフィアのボスという道を選んだ一因には彼らの存在が大きかった。
俺が大空だって言うのなら、虹のお前達の居場所だってここにつくってやる。その想いで、この闇の世界に足を踏み入れたのだ。
あれから十年。
自分の決意が正しかったかはわからない。
けど、目の前で楽しそうに笑う彼らの姿を見るたびに、これで良かったのだと思う。
・・・最近のプレゼント攻撃さえなければ。
そういえば、コロネロには貰ってないな、と安心してたら「そうだ、一つぐらい持ってた方がいいだろ、コレをやるぜコラ」と、可愛らしいピンクのリボンが巻かれた箱を渡される。―――――お前もか。
「・・・なにコレ」
顔は引きつらなかったが、声は硬くなってしまった。
これで、アルコバレーノの子供たち全員になにがしらかを貰った事になるのだ。
「新素材のサバイバルナイフだコラ」
俺の硬くなった声は気にせずに、答えられる。
何なんだ、最近アルコバレーノの中でプレゼントを贈るのが流行ってんのか!?
そう言えばこいつら丁度、思春期だもんな。リボーンに至っては盛ってやがるけど。気になる相手でも出来たかな。その練習に俺にプレゼントを送ってきてるのかな。
だったら、気になる相手にはもう少し情緒の有る物にした方が良いと教えてあげるべきだろうか。その点ではリボーンの薔薇の花束は合格だが、あいつには今更だろう(なんせ女性の扱いは彼に教わった)。送る相手を間違えているけど。
コロネロの方といえば、妙に熱い視線でこちらを伺っている。
「・・・・・・ありがとう」
とりあえずお礼を言うと、おう、と照れたような返事が返ってくる。
身長や体格こそ簡単に追い抜かれてしまったが、こんな時は年相応に見える。
あれかな、小さい時から一緒に居たから親みたいに思われてんのかな。それだったらちょっと嬉しいけど。
でも、脈絡無くサバイバルナイフ渡すのはどうかと思うぞ。
ああ、腰がだるい。
目を伏せて小さく溜め息をつく。
僅かに目を見張ったコロネロが聞いてきた。
「・・・誘ってんのか?」
何を?・・・いやいや、そんな冗談は覚えなくていいから。それに俺男だし。
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頑張って、大人っぽい作品を!!と思ったのですが、無理でしたorz。
虹っ子達は気付いたんです、ツナへの恋心を。だから少しでも気を引こうと、プレゼント攻撃を仕掛けてるんです。あんま実ってないですけど。
守護者連中は、プレゼントよりも笑顔やらお茶する時間を綱吉が楽しみにしているのを知っているので送らないのです。
・・・良かったら貰ってやってください;。
- 2007/10/19/17:26
- Novel
Buon natale
めずらしく甘々です。
12月25日 natale。
綺麗にデコレーションされた、苺と生クリームのケーキをすくい、リボーンの口に運ぶ。
開かれた小さな口の中に差し入れ、様子をうかがう。
少し咀嚼した後に嚥下。
チラリと走った黒曜の瞳に、愉悦の色。
くっと上げられた唇の端に安堵し、直後に言われた言葉に顔を綻ばせる。
「まあまあじゃねぇか」
本当?と返し、自分の口にもケーキを運ぶ。
甘さを控えた生クリームと、スポンジに染み込ませたブランデーの香り、苺のさわやかな酸味が口に広がる。
日本で育った綱吉にとっては、イタリアで一般的にクリスマスで食べられるドライフルーツが盛り込まれたパン生地のパネトーネよりもこの苺と生クリームのケーキを食べたときの方が、クリスマスが来た気がする。
「うん。おいしい」
にっこりとリボーンに笑いかける。
報われた努力に満足し、手伝ってくれた今は里帰りしているボンゴレお抱えのパティシエに感謝する。
イタリアのクリスマスは、日本の正月の感覚に近い。
24日までに買出しを行い、深夜から25日にかけての大聖堂でのミサ。
帰省し、25日の昼からは親類で集まり昼食会をして、26日のサント・ステファノの祝日を家族で過ごす。
翌年の1月6日までナターレの飾りつけは外されず、クリスマス気分がつづくのだ。
マフィアであるボンゴレもイタリアに拠点を置く以上、例外ではなく構成員の多くも今は帰省している。
今の綱吉の警護はリボーン一人が請け負い、屋敷内はひっそりと静まり返っていた。
流石に、昨晩のバチカンでのミサへの出席には、数名の警護を伴ったが、屋敷に帰ったと同時に任を解かせて帰省させた。
ボンゴレの十代目を襲名し、イタリアで生活するようになった綱吉だが改宗はせず今でも仏教徒(多くの日本人の例に漏れず形だけの、であるが)だが、ボンゴレの当主となった以上、バチカンとの関係は無視できないため、乞われるままにミサに参加し、法王に面会をしてきた。
法王は、あまりの綱吉の警護の少なさに驚いたようであった。が、カトリックの影響力の強いこの国でナターレに騒ぎを起こした者は、以後、信頼を失墜し表舞台に立つことはおろか、闇の世界ですら歩くことは出来なくなる。
そのような愚を起こすものは稀であり、何よりもリボーンが綱吉の隣に居る時点で、何者もボンゴレ十代目である綱吉に傷一つ負わせることは出来ない。
そんなわけで、25日と26日の二日間はボンゴレの屋敷は閑散とし、綱吉とリボーンと二人っきりとなる。
使用人すらも帰省させてしまうため、この間は二人で家事を分担せねばならないが、リボーンは言うまでも無く家事すらも完璧であったし、綱吉の方もビアンキの料理から逃れるために必死で奈々から料理を教わり、今ではそれなりの物が作れるまでになっていた。
もっとも、心配性の部下や使用人達により作り置きされた大量の料理を消費するのに精一杯で、腕を振るう機会は今のところ無く、のんびりとした時間が流れていた。
皆が家族で過ごすナターレだが、リボーンと二人っきりで過ごすことに不満は無かった。
綱吉にとって、12歳の時から共にすごして来たリボーンは家族そのものであり、今や家族以上の愛情を傾けるべきファミリーの一員でもあった。そして、最愛の相手。
仕事も緊急にメールで送られてくるもの以外は無く、二人っきりで居られるこの機会に何かを、クリスマスプレゼント以外で渡したかった。
食事は、拒否しても作り置きが用意されることはわかり切っていたので、ならばせめてとパティシエに頼み、25日の夜に食べる事が恒例になりつつある苺のショートケーキの作成を手伝わせてもらったのだ。
自分も作成にかかわったと解らなくて良い。
ただ、自分の作った何かをリボーンが口にする。
それだけで良かった。
自己満足であったが、綱吉は満たされた気持ちになったのだ。
普段は味わえない、自分が作ったものをリボーンが口にする幸福。
それだけで、今日という日を信じてもいない神に感謝したくなる。
ケーキをすくい、リボーンの口に運ぶ。
少し咀嚼した後に嚥下。
今度はリボーンがフォークを持ち、綱吉の口にケーキを運ぶ。
小さなワンホールケーキを互いに食べさせあいだしたのはいつ頃からだっただろうか。
もう思い出せないぐらいに、その行為は二人の間で当然の事となってしまっていた。でも、自分達はそれで良いのだと思う。
お互いが傍に居るのが自然で、共に居るのが当然。
「ツナ」
「なあに?リボーン」
シャンペンを一口。
「オレを想って、作ったのか?」
飲み下した後でよかった。
目を見開いた綱吉の顔を見て、黒曜の瞳がしてやったりと嗤う。
「お前の作ったものを、オレが解らない訳無いだろう」
その言葉に耳を染め、綱吉は目を逸らしたが顎にそえられたリボーンの手によって阻まれる。
そして落とされる、口付け一つ。
ナターレの夜は長く、祝福は平等に降りそそぐ。
Buon natale!!
- 2007/12/25/23:48
- Novel
うなされて起きたら
リボーン→綱吉。
うちの綱吉さんは鈍いです。
続編は「うなされずに起きたら」。08/07/11 UP。
目が覚めると明るかった。人工的でない、自然の光がさしている。
ならば今日は朝になってから目覚める事が出来たらしい。
いつものように、うなされて明け方に起こされるのでなく。
事の発端は一週間前、息苦しい感じがして目覚めたことによって発覚した。
「・・・・・・・・・・・・何やってんだ、リボーン」
起き抜けの頭とは言え、たっぷりと考えた後で聞いた。
己の元家庭教師の行動を。
「何って、見りゃわかんだろ」
即答される。
解んないから聞いてんです。や、分かりたくないって言うかね。
第一、寝室の鍵は何十にもロックされそう簡単には入れないはず・・・、と思ったが相手がリボーンの場合には通じなかったと思い当たる。
何せ、寝室の鍵を厳重にするように指示したのがこの元家庭教師様だからだ。だが、指示した本人が破っていては意味が無いだろう。
「夜這い以外の何に見えんだよ」
これだけは外れて欲しかった答えが返ってきてしまった。
確かに上半身裸のリボーンに腹の上に乗られ、その彼にパジャマの上をはだけられてる自分。
どう見たってそれ以外には見えないだろう。今の季節、暑くだってないのだ。
いまだに肌をまさぐる手を止めるべく、リボーンの手を握り締める。不機嫌そうな顔を向けられたが、これ以上は勘弁してほしい。
「り、り、り、リボーンさん!俺男なんですけど」
分かりきったことだが一応聞く。どもってしまったのはご愛嬌だ。
「ダメツナ。オレ達が何年の付き合いだと思ってんだ」
いや、その何年もの付き合いの奴にいきなり襲われりゃ聞きたくもなるだろう。何せ相手は幼いながらも何人も愛人を持つお子様なのだ。女性には不自由してないはずである。
「安心しろ。男はお前だけだ」
や、問題ソコじゃないから。
なんだか熱っぽい視線と艶の有る声で言われ、オプションで握った手を引き寄せられて、チュッと口付けられる。
さすが幼いながらに幾多の愛人を持つリボーン。動きが無駄にカッコいいじゃないかと感心していると、そのまま逆手に取られ、頭上に両手を拘束される。
もしかして、俺ピンチ!?
何とか身をよじり、足を使いと攻防をするが形勢は不利。
リボーンの行動の理由を探ろうにも、一向に止まない愛撫(愛撫って言っちゃったよ!)に思考がまとまらない。むしろ息が上がってきてしまう。
さすが百戦錬磨。
だが綱吉も必死である。
そうこうしてる内に空が明らみ、起きる時間となっていた。
「チッしゃあねぇ。今日のところは勘弁してやる」
そうしてその日はお開きとなり、それ以来、明け方にうなされ起きるようになったのだ。
むしろ、起きなきゃヤバイ。
仕事の合間に心理学の本を読んでみたり、リボーンに悪戯される様な原因を探ってみたりしたが解らない。
寝室の鍵も強化してみたが、やっぱり効果は無かった。
今の所、何とか貞操は守れているがそれも時間の問題と思われる。
そんな日が続き、いい加減ブチ切れた綱吉が長期の任務をリボーンに押し付けたのが昨日。
今日は久々の健やかな朝となった訳である。
(うなされずに朝目が覚めるって素晴らしい!)
明日にはさっさと仕事を片付けた(後始末はスカルに押し付けた)リボーンにまたうなされる事も知らず、朝まで寝られた綱吉はご機嫌であった。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
思春期なリボ様。
日記より移動。加筆修正。
- 2008/01/18/23:52
- Novel
ハッピーウエディング?んな馬鹿な!!
現在リボーン→ツナ
※アニリボ標的68ハッピー?ウエディング派生ネタ
ペーパー№2より再録。
うん、色々と時期を逃したんだ;。
なんやかんやで怒濤の結婚式が終わったあと、ツナはリボーンと一緒に帰路に着いていた。
今日はいきなりリボーンとビアンキの結婚式に招待されるは、居なくなったリボーンの代わりにジャンニーニが造ったリボーンロボットを四苦八苦と操作してビアンキを誤魔化すも、最後にはバレてビアンキが暴走しかけるは、間一髪でリボーンが止めに現れたかと思ったらまたもやロボットで、その試作品の大量のリボーンロボットで会場が埋め尽くされるは(結果的に、その中からリボーン本人を見つけられなかったビアンキは、納得してその場は収まった)、大変だった。最終的には奈々と家光の結婚式仕切り直しとなり、それぞれが楽しむ事ができたわけだが疲労感が拭えるわけではない。
いつだってリボーンの行動にはツナの苦労が付随してくるのだ。
幸いな事といえば、ビアンキが愛の修行をしてくると式の後姿を消し、獄寺君は病院に運ばれ、山本は親父さんと片付けに。ディーノさんは部下に呼び出され帰国、母さんと父さんは数年ぶりのデートに出かけ、今この場に自分とリボーンしか居ないことだ。皆には申し訳ないが、今は少しでも静かにしていたかった。
「そう言えばお前は、オレがどれだと思ったんだ?」
平和っていいな~、と思いながら歩いていると突然リボーンに問いかけられる。式に現れた大量のリボーン人形の事だろう。
「俺?全然分かんなかったよ~。どれもお前っぽいけど違うしさ。そしたらあんな所に居んだもん」
そりゃ見つからないはずだよな、と続ければリボーンは暫し考え込んだ後、聞いてきた。
「じゃあ、お前はあの中にはオレはいないと思ったんだな?」
「え?まあ、うん。そうだね」
それがどうしたのだと思うが、さして気にせずに帰路を歩く。
リボーンはニヤリと赤子らしからぬ嗤いを見せると。ツナの肩に飛びのった。
「お前ならいつでも嫁に来れるな」
「はあ?何言ってんだよ」
いきなり飛びのってきたリボーンに驚きつつ、耳元で言われた言葉に呆れる。確かにあのロボットの群れの中にはリボーンを見つけられなかった。だからと言ってビアンキのようにそれが、愛の力などとはとてもじゃないが言えない。普段から綱吉はリボーンの変装はことごとく見破れるのだ。むしろ見破れない周りのがおかしいと思っている。ロボットだって同じで、朝のように驚いた状態でなければ区別はつくのだ。何を今更と笑い飛ばすと今日の文句を言い、リボーンの言葉などすっかり忘れてしまった。
妙に優しい手つきで髪を撫でてくるリボーンの不審な行動は気になりはしたが。
その事を後悔するのはもう少し後のこと。
数ヶ月後、目が覚めると左手の薬指には見たことの無い指輪がはまっていた。
こんな突拍子も無い事をするのは自分の知る限り一人しかいない。現に、ツナの左手を満足そうに見つめている。
「リボーンさん」
「何だ?ツナ」
「…本気ですか?」
「本気じゃなかったら、給料三ヶ月分をはたいた指輪なんぞ贈るわけ無いだろ」
「給料三ヶ月分て、どんだけだよ!!」
「思ったより浮気センサーの搭載に苦労してな。…男には近付くなよ?爆発するぞ」
「どんなんだよそれ!て、生活出来ないから!!」
「無理に外そうとしても爆発するしな。安心しろ。オレが近付いても爆破はしねーからな」
「て、どこさわってんだよ!!むしろお前相手に爆発して欲しいよ!ギャ――――――!!
- 2008/06/17/22:16
- Novel
走馬灯という名の現実逃避
うん。結構な勘違いリボーンと言うかキーボと言うか。
「豚足三人前」の杉本さんとのセクハラリボの交換品。
リボーンが俺の家庭教師になって15年が過ぎた。
その間、色々な事があった。
マフィア監獄の脱走者を倒したりそいつが自分の守護者になったり、ボンゴレの後継者争いに巻き込まれたり、10年後に飛んで未来を(つまり今現在の事だが)を変えたり。
本当にいろんな事があった。
その間、リボーンのしごきや他に師事してくれた凶悪な教師等によりダメツナからは脱却したが、そのせいか(と言うかその為にだが)今はイタリアンマフィアのボスなんて職業に就いちゃってる。
嘘だろうと思いたいが、事実なものはしょうがない。
10年前の出来事からある程度覚悟はしていたが、いざとなると衝撃は大きい。
これでも、対策は練ったんだぞ?
未来が解かっていれば、少しは逃れる術が見つかるかもしれないと、リボーンに鍛えられた脳みそをフル回転させて逃げ回った。リング戦で対立したザンザスにまで頼み込んで策を弄したというのに、結局俺はボンゴレ・ボスなんてもんになってる。
自分でも途中まではイイセン行ってたと思う。だが、最後の最後で崩れてしまった。
他ならぬザンザスの裏切りで。
最初は乗り気だったくせに、途中からなんか様子が変だと思ってたんだよな。
そうしたらアレだ。
あっさりと簀巻きにされて、就任式のボスの席に座らされていた。
マフィア史の中でも、簀巻きにされて就任式を受けたのは俺が初めてだという。もちろん、後にも無いだろう。
そんなこんなでマフィアのボスなんてものになってしまった。
初めは嫌々だったが、始めてみると案外ボスなんてものも悪くない。
かあさんの手料理とまではいかないがご飯はおいしいし、仕事もおもに名前を書く書類仕事ぐらいで当初想像してた血生臭さはまったく無かった。
月に一度の、ボンゴレ出資の孤児院をのぞきに行くのなんて楽しみなぐらいだ。どうも俺は子供好きらしい。中学の頃から家に子供がいっぱいいたからかな?
あ、あと獄寺君はいつも側にいてくれるし、山本はメジャーリーガーになりながらも時々遊びに来たり此方の仕事を手伝ってくれたりしてくれる。
京子ちゃんのお兄さんも楽しそうに拳を振るっているし、恐怖の風紀委員長様の雲雀さんも元気に群れを噛み殺している。(この二人は何だか物騒だって?気のせいだよ)
ランボはランボで相変わらずリボーンに返り討ちにされて、俺の元に泣きに来てる。無駄にでかくなったランボに抱きつかれるのは多少、いやかなりウザイけどランボだから仕方ない。
パーティーや社交界は少々かったるいが、大ボンゴレと言う事で二回に一回は代理を立てて寄越しても文句は言われない。
休日は系列のゲーム会社の試作品を試しに遊びまくれるし(そのおかげで業績上がったんだぞ?)、休みの予定は勝手に決めても文句は言われない。なにせ俺がボスなんだから。
そんなこんなで意外とマフィアのボス業は順調だ。
予想外だったのは自分の身長の伸び具合と、リボーンの成長の速度だ。
親父が長身の筋肉質だった為、かなり期待していたのにも関わらず俺の身長は中学時から10cmしか伸びなかった。過去に10年後の山本に言われた「もう少しでかくなった」と言う言葉を思い出して、本当に少ししかでかくならなかった・・・!!と嘆いたのものだ。
しかも親父と違って筋肉の付きにくい体質だったらしいく、イクス・グローブの扱いやリボーンの鬼のような特訓に耐えたと言うのに薄っすらとしか俺の筋肉は付かなかった。身長が低いのに筋肉も無いだなんて男としては情けない。
イタリアの地に居ると、今でもティーンに間違われるのは泣けてくる。
・・・もう俺、27歳なんだよ?なんで10才以上も下に間違われなきゃならないんだ!!
そんな俺に対してリボーンはすくすく成長してくれた。
まん丸なお目目は切れ長なそれに。手足はすらりと伸びて背も高くなった。(この間なんてついに俺の身長を抜きやがった!!)
身長があるため細身に見えるが、その服の下に隠された体躯はしっかりと筋肉がいている事を知っている。顔なんてちっちゃい頃の面影が無いほどにきれいになり、外を歩けば十人中十人が振り返る有様だ。(しかも男女関係無く!)
嫉妬するのも面倒な美青年。出来れば隣を歩きたくは無い。
だが、その美青年は俺の元・家庭教師で現・俺専属(らしい、気が付いたらそういうことになっていた)ヒットマンであるからして側に居ない訳にはいかない。
幸いなのは、その美貌の為愛人の数も半端でないらしく、しょっちゅう色んな相手に呼び出され、最近はたまにしか側に居ない事だ。
愛人様万歳!
今日も今日とて朝早くに呼び出されて出て行った。
何でそんなこと知ってるかって?同じ部屋に寝てるからだよ。
流石に同じベットでは寝てないが、それ以外は大概一緒だ。俺もいい年だし恥ずかしいからと再三断ったにも関わらず、あいつは無防備になる時こそ警戒が必要なんだと言って未だに一人で風呂にも入らせてくれない。おかげで俺はリボーンのナニのサイズまで知っちゃってたりするのだ。そんなもん知りたくなかったけどね!!
トイレは一人で行かせてくれるが、休憩の時は常に俺の左側の席をキープしているし休日も何をするでもなく俺の隣で勝手にくつろいでいる。
愛人さんの呼び出しで出かけない限り俺の側を離れる事は無い。
彼女達が居て本当に良かった。
俺もこんな歳だし、マフィアのボスなんだし愛人さんの一人や二人・・・いや、こ、恋人なんて欲しいと思うこともあるけど、超絶美形が常に側に居るんだ。長続きするはずが無く、すぐに振られてしまう。
たまにこの人なら・・・!と思った女性もいつの間にかリボーンの愛人さんになってたりしてうまくいかない。
しまいにゃゲームや美味しい物でも食べてだらだらしていた方が性に合ってると諦めた。
今日も今日とて休日だというのに、取り寄せた日本先行販売の新作ゲームとポテトチップスに夢中になっていた。
リボーンが上機嫌で帰ってくるまでは。
美形というものは何をしていても様になるものだと、リボーンと居てつくづく思う。
あまり表情を見せないリボーンだが、15年も側に居た俺には些細な表情の変化も解かる様になっていた。これまで色んなリボーンの表情を見てきた俺だけど、今日の顔は特に輝いていた。
うっとりと目を細め、唇は愛おしげに弧を描く。こんな艶やかな表情は今までどんな美女相手にも見たことは無かった。
なんか良い事でも有ったのかなーと暢気に思う。
リボーンの機嫌が良いのは喜ばしい事(俺への被害が減る)だが、そんなことよりスースーするお腹の方が気になっていた。
さっきから冷たいものが腹や胸をさまよっているのだ。
なんだこれと思い切ってその根源を辿って見る。
「・・・・・・・・・リボーンさん」
「なんだツナ?」
さも不思議そうに返される。その瞳は相変わらずキラキラしたままだ。
場所はいつの間にかベットの上。着ていたシャツは既にはだけられ、ズボンのベルトも外れかけていた。腹の上にはリボーンの腕がのせられてる。
・・・そう言えば、リボーンが帰って来た時に何か衝撃的な事を言われた気がする。頭の奥で警戒音が響くが思い出さないことにはこの状況が飲み込めないだろう。
ビービー!!最大級の警戒音。や、やっぱり思い出すな自分!
そんな想いもリボーンの言葉でむなしく散る。
「言っただろう?さっきの相手で愛人とは全て切れた。これでお前と愛し合うのになんら障害は無い」
ああ、そうだった。
それで俺はリボーンにベットに押し倒されたんだ。
さっきまで現実逃避に成功していたというのに、なんてこった!!
このところ愛人さんの所をせわしなく行き来していたのは別れ話をしていた為。
愛人さんが居なくなったイコール二人っきりの時間が増えてしまう。
またリボーンの中では、愛人さんが居なくなるイコール俺と愛・・・付き合うに変換されてるらしい。
何がどうしてこうなった。
今まではまったく、何の前兆も無かった。
多少視線が痛かったり、やたらとスキンシップが増えてきたなと思ったがそれだけだった。リボーンのすることだとほおっておいたのが悪かったのか!?
第一、美人ぞろいの愛人さん達を振っておいて俺っておかしいだろう。
何、トチ狂ってるんだリボーン!!とっとと目を覚ませ、と言いたいがガシッと頬を掴まれ唇を寄せられる。
ギャァァ―――――――――!!!!
しっかりネッチョリ舌まで入れられた後おもいっきり口の中まで嘗め回され、ようやく開放されるとリボーンに特上の甘い声で囁かれる。
「愛してるぞ、ツナ」
頼む。
誰か俺の目を覚まさせてくれ。もしくはリボーンの!!
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
・・・こんなんで良いですか?杉本さん;;。
良かったら貰ってやってください!!
- 2008/07/09/00:31
- Novel
うなされずに起きたら
リボーン→綱吉。
「うなされて起きたら」の続きです。
ここ最近の睡眠不足を解消すべく、その日綱吉は仕事をまるっと休みにして朝寝坊を楽しんでいた。
睡眠不足だったのは、何も仕事が忙しかったわけではない。
右腕(と言うよりも、ほぼ私設秘書といって良いだろう)の獄寺に完璧にタイム・スケジュールを組まれている綱吉は、よっぽどの事が無い限り睡眠・食事・休憩時間は確保されているのだ。
そのスケジュールどうりならば、8時間の睡眠が確実に得られるはずだったのだが、何事にも不測の事態は起こる。
この一週間ばかり、明け方頃にリボーンが夜這いに来てくれちゃってたのだ。
必死に“夜這い”以外の理由を考えていたのだが、他ならぬ本人によって肯定されてしまったため間違いないだろう。
もっとも上半身裸のリボーンと、そのリボーンに腹に乗っかられパジャマをはだけられた自分と言うシチュエーションで、それ以外の理由が有るのなら是非とも教えて欲しい。
切実に。
その上、男は俺だけだと言われ、そこかしこをまさぐられれば鈍感さに定評のある俺ですら何を目的にしているか解かる。もっともその結論に至るまでに、散々それ以外の可能性を模索したのだが。
だってそうだろ。綱吉の元家庭教師であるリボーンは、赤ん坊の頃から愛人を最低でも四人ほど抱えていたのである。今では二桁の大台に差し掛かろうというほどにその人数は年々増え、本人も老若男女問わず誰もが振り返る程の美青年なのだ。女性に不自由しているわけではない。
むしろ、不自由しているなんて言った日には振るボッコだ。
そして、綱吉はあくまでノーマルだ。
女の子が好きだ。今でも心のマドンナ京子ちゃんへの恋心をひっそりと暖めていたりする。
やわらかくて、いい匂いがして、優しい女性が好きだ。
そんな女性とは正反対の筋肉が付いていて、硝煙の臭いがして、オレ様なリボーンなんて受け入れるはずが無い。
第一、男だ。うん、無理。
と言うわけで、必死の攻防が一週間に渡って繰り広げられ、明け方から朝にかけての睡眠時間であったはずの時間が無くなったという訳だ。
綱吉とてマフィアのボスだ。
一週間やそこら、非常時には睡眠不足になる事もある。
それ以上は綱吉の体調を心配した守護者やヴァリアーや知り合いの子供達が暴れ、さっさと相手ファミリーが壊滅してくれるので経験をした事は無いが
非常時なら耐えられる。
しかし、今は非常時ではない。リボーンの単なる気まぐれなのだ。
結果、早々にブチ切れた綱吉によってリボーンは長期任務を押し付けられ放り出された。それが一昨日の事。
昨日は久々の健やかな朝に満悦し、快適な一日をすごした事で翌日(つまり今日のことだ)を休みにすることを思い当たった。
幸い、ここ最近は物騒な事も無くマフィア界は安定しているし、最近休みらしい休みを取っていなかった。
いつもならどんな時でも側にいるリボーンは居ない為、羽を伸ばすには絶好の機会だろう。
普段なら休みの日でも定時に起され、リボーンの我侭につき合わされるのだがそれも無い。このところの睡眠不足を解消するのにも調度良い。
そうしてリボーンを任務に送り出した翌々日は休暇をとり、綱吉は惰眠をむさぼった。
太陽が真上に上がり部屋に直射日光が差し込まなくなった頃、綱吉は目を覚ました。
あー、よく寝た。
昼まで寝たのだ。気分爽快。まさにその一言に尽きる。
前日に引き続いて快適な気分で目覚めた綱吉は、ベッドの上で十分にまどろんだ後、リボーンの居ない休日を怠惰に過すべく起き上がろうとした。
が、そこで固まった。
・・・なんでこいつが居るんだ?
目の前には黒いボルサリーノに真っ黒なスーツを相変わらず粋に着こなした元家庭教師様。そのリボーン様が腕組みをして、ベッド横に置かれたカウチに座り、真剣な顔で腕組みをしていたのだ。
少なくとも、いくら超人的なリボーンでも一週間は掛かるであろう任務を押し付けて放り出した筈である。(因みに他の人間だったら一ヶ月は掛かる)
一瞬、思考を遠く彼方に飛ばしかけたが、綱吉も一家のボス。
すばやく立ち直る。
「お前・・・仕事はどうした!?」
「バッチリ完了済みだぞ、オレ様を舐めんな。・・・後始末はパシリに任せたがな」
そう言えば、今回のリボーンの任務地はスカルの拠点に近かったんだと思い出す。ごめん、パシリ!・・・じゃ無くてスカル!!
「つーかさあ!今回の任務は現地で確証を得てから実行に移す手はずだっただろうが!何やってんだよ!!」
「あいつなんざパシリで十分だ。お前の直感が外れる訳ねーだろ。一発ズドンで十分だ」
あっさりパシリで流されたスカルは可哀相だが今は構っていられない。聞くべき事を聞くまでは!
「一発ズドンでも資料が無けりゃいくらお前でも、もう少し時間掛かるだろうが!!」
「あぁ?その言い方だとお前、ワザと資料渡さなかったな」
「!!」
墓穴。
ニヤリと嗤われ「ネッチョリ再教育だな」と言われる。
再教育イヤだー!!と叫んだところでやけにリボーンの視線が熱っぽい事に気付く。
視線は、昨日不精してトランクスとパジャマの上だけを引っ掛けた姿の俺から一片も逸らされない。
「リ、リボーンさん?」
嫌な汗が背中を伝う。
「お前、今日休みにしたんだな」
有無を言わせぬ迫力に首だけを上下させる。
「急いで仕事終らせて帰ってきたら、お前が無防備に寝顔と扇情的な格好をさらして待ってんだ。しかも今日は休みだと?」
や、無防備はともかく男の下着姿は扇情的とは程遠いだろう。しかも待ってなどいない。
だが、そんな事に構うリボーンでは無い。
勝手に納得するとこうのたまったのだ。
「よし、お前からの誘いは受けとった」
誘ってねぇぇ――――――!!
「今まで手加減してきたが、お前がその気ならもう我慢はしねぇ。覚悟しろ」
そう宣言し、自分のネクタイに手を掛けるリボーンに俺は抗う術を知らなかった。
***************************************
「なあ?良かっただろ?」
「もうお婿に行けない・・・」
ほんとお前さいてーと言う言葉は、リボーンの唇によって遮られた。
翌日は由来不明の祝日になったが、ボスはその事について一言も語らなかったという。
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拍手で「うなされて起きたら」の続きを!と言われ、調子こいて一ヵ月後にとか言ったはいいが、それから半年・・・。
さいてー;。
でも何とか出来上がりました!と言って見る(笑)。
因みに祝日にしたのはリボ様ですw。
- 2008/07/11/00:40
- Novel
Non da solo
数十年後。リボーンと綱吉。
※微妙な死にネタです。
一人ではない
弾を撃ちつくした後、額に炎を灯す。
綱吉の射撃の腕前は、最強のヒットマン仕込のものだ。一弾たりとも無駄にせずに標的を正確に、確実に仕留めていく。簡単な抗争なら、死ぬ気にならなくとも事足りる。
だが、今回は相手が悪かった。
ボンゴレ以外の全マフィア。
それが、今回の相手であった。
綱吉がドン・ボンゴレ十代目に就任して以来、ボンゴレの勢力範囲は格段に拡がった。
初めは誰もがジャポーネの坊やに何が出来ると侮っていた。しかし、的確な経営手腕、合法的な資金繰りに、孤児院への寄付などの社会貢献。それらを武器にボンゴレは静かに、だが確実に領地を拡げていった。
ボンゴレは理想的であった。過ぎるほどに。
弱気を助け、強気を挫く。
全ての住民に安寧を。
そんな事は不可能だろう。
だが、ドン・ボンゴレ十代目はそれを実行し、実現させたのだ。
まさにマフィアの鏡とも言うべきその手腕に、人々は尊敬を抱き崇拝者まで現れた。
しかし、それが畏怖の念に変わるのも早かった。
眉間にシワを寄せ、拳を振るう。
殺しは好きじゃない。だが、殺らなければ殺られるのは自分だ。
何人殺したか知らない。敵は無尽蔵に湧いて来る。
何せ、全マフィアが相手なのだ。
いくら死ぬ気の炎を使っているとは言え、次第に拳が重くなる。
何故。
襲撃されて以来、数時間考え続けていた。
それまでは順調に行っていた筈であった。完璧な家庭教師に育てられたのだ。自分の出来うる限りの最善を尽くして来た。
それなのに何故。
“過ぎたるは及ばざるが如し”
不意に、家庭教師の言葉を思い出す。
そうか。
多分、自分はやり過ぎたのだ。
雲行きが怪しい。雨が降らなければいいが。
炎の噴出を大きくし、ほぼ一帯を殲滅する。
これで、少しは時間が稼げるはずだ。
幸いだったのが、ほとんどのファミリーを逃がす事が出来た事だ。
流石に戦闘狂の恭弥は無理だったが、山本や了平さんは国外の任務と偽って出国させていたし、骸は元よりヴィンデチェの牢獄だ。隼人はDr.シャマルに半ば騙し討ちのようにして連れて行かせた。
ランボはまだ若い。それに、ドン・ボヴィーノが守ってくれるだろう。
一緒に襲撃を受けたディーノさんは大丈夫だろうか。
彼は綱吉をかばって、撃たれていた。
すぐに駆けつけたロッマーリオに彼を預けてきてしまった為、容態は解からないが意識はあったし、その場の襲撃者は引き付けたため、差し迫っての危険は少ないだろうが。
脇腹が熱い。
膝をつきそうになる足を叱咤して、あたりを見回す。
近くに高台の無い、平野が続いている。所々にコンクリートの大きな破片や産業廃棄物が見受けられるが、足場はそう悪くない。
少し、休めれるか。
だが、一歩を踏み出したところで勘が訴えた。
何か、いや誰かが居る。
気配は一分も感じない。
綱吉にすら気配を感じさせない相手に、背中を冷たい汗がつたう。
それと同時に背後でも複数の気配がした。
前か後ろか。
問われれば警戒すべきは確実に前者だろう。
だが、綱吉は背後の敵に拳を振るっていた。
それと同時に、気配無き相手の方向からも戦闘音が響いてくる。
(ああ、この発砲音は。)
背中に触れた、気配無き相手の体温に泣きたくなる。
「おまえ、なんで居るんだよ」
「だからお前はダメツナだって言うんだ」
今やドン・ボンゴレである自分を昔の愛称で呼ぶのは彼だけだ。
自身の家庭教師であったリボーンの、愉悦を含んだ声に長年の習性で警戒心を抱く。こんな声を出すときには毎回、無理難題を吹っかけられたものだ。
だが今はそんな事を気にしている場合では無い。
怒気を込め、リボーンにもう一度問いかける。
「何で、居るんだ」
リボーンは確かにボンゴレ所属のヒットマンだ。その事実は変わらない。九代目の時代から、また十代目である自分の時代も。
だが、彼は同時にアルコバレーノでもあるのだ。
マフィア界の宝でもあるアルコバレーノの彼は、選べたはずだ。
ボンゴレを捨て、生き残る術を。
実際、ここ数年彼はボンゴレの仕事をしていなかった。綱吉はそれを許容していたし、あえてそうするようにも仕向けていた。
彼はボンゴレに縛るべきではない。
だが、リボーンはそれを善しとしなかったのだろう。その答えが、これか。
頬に、水滴があたる。
雨が降り出したのだろう。
「・・・最悪」
リボーンなら、気付いている筈だ。
綱吉の脇腹から血が流れている事に。綱吉の命が、そう長くない事に。
そして、綱吉も気付いていた。自分以外の血臭に。リボーンの残りの弾が少ないことに。
だがリボーンは素振りで、いかにも楽しくてたまらないと言うように聞いてくる。
「反撃するんだろ?」
「ああ、するよ」
してやろう。
自分達の全てを賭けて。
おそらく、もう二度と自分達は互いに逢う事も、言葉も交わすことも出来ないだろう。
綱吉の勘は外れない。
自分達はここまでだと、解かっていた。
雨脚が強くなる。
土砂降りの雨に濡れた衣服が張り付いて気持ち悪い。だが、それ以上に流れていく血が止まらない事に気分が悪くなる。
だが今更、炎で焼いて止血したとて意味は無いだろう。
流れた血は元に戻らず、ここから逃げ延びる可能性は低い。それに、弾丸がまだ見の内にある。
ふと、マフィアのボスにならなければ鉛玉をくらう事なんて一生無かっただろうなと思い、笑いがこみ上げる。
「後悔、してるか?」
マフィアのボスになった事に?
「今更だよリボーン」
後悔なんてしない。
それに、一人じゃない。お前が、共に居るじゃないか。
「後悔、させてやろう」
そうだ。後悔するのは、彼等だ。
「誰に手を出したか、思い知らせてやろう」
ドン・ボンゴレとアルコバレーノ・リボーンが相手だ。
「楽に殺せると思うな」
簡単に殺れると思ったのか?笑止。
「それでこそ、オレの生徒だ」
リボーンのその言葉に満足して、拳に力を込める。
顔を上げるとそこには数百、いや数千の敵の群れ。
俺たちを、舐めるな。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
マルさんの某作品を読んで「こんな話が書きたかったの―――!!!」と大興奮して書き上げた代物。
だが、此方は最後の方が正反対な結末。因みにネタ発生時のタイトルが「抗争で最後を迎えるリボツナ」。・・・穐吉の人間性が良く解かりますね!!(死にネタ・グロ・サド大好物)
貰ってくださると、寛大なお言葉を頂いたのでマルさんに捧げますww。
一周年と10万Hitおめでとう!と、今更ながらに言って見る(笑)。
- 2008/08/01/23:57
- Novel
疑う必要など無い。幸せは常に彼が運んで来てくれるのだから
リボーンのする事に間違いは無いと思っているツナ。
タイトル長いです・・・;;。
VP!2nd絵茶でツナ誕を祝っていたら、いつの間にか「結婚おめでとう」にすり替わっていたので情動的にUP。
ペーパーNO.4からの再録。
基本的に、綱吉はリボーンの言う事は疑わない。
そりゃあ時々、突発的な思いつきと行動で振り回されたりするが、結局は綱吉の不利になるような事はしないからだ。
最初はマフィアになんてなりたくなかった。
だが、リボーンが綱吉の元に訪れた事で事態は動き出してしまったし、もしリボーンが来なくても他の者が綱吉の元を訪れていただろう。
少なくともリボーンは綱吉が本気で嫌がることはしなかったし、ダメツナと呼ばれ全てを諦めていた綱吉の毎日を良い方向に変化させた。
友人を作り、勉強を教え、修行で運動をさせてやればやった分だけ身に付くことを教え込んだ。
綱吉だって、最初の頃は一生懸命に“普通”に出来るように努力していた。
だが、物覚えの悪い綱吉は中々成果を上げる事ができなかったし、始めは協力的だった教師達も綱吉の覚えの悪さに根を上げてしまった。結果、綱吉は何をやっても駄目な人間なのだと納得して諦めてしまった。
だが、リボーンは諦めなかった。
他の、それまでの教師達とは違い、厳しくはあったが根気強く、綱吉が納得して理解するまで嫌な顔一つせず教えてくれた。
そうしたリボーンの根気強い教育のおかげで、綱吉の成績は上がったし運動だって出来るようになった。
高校を卒業するときには成績は上がっていたし、誰も綱吉のことを“ダメツナ”と呼ぶものはいなかった。もし、綱吉の元に来たのが他の教師であったら、綱吉はここまで成長できなかったであろう。その為、何があろうとも綱吉はリボーンの教育に疑問を持ったことは無かった。
リボーンとは長年寝食を共にして、綱吉と共に成長してきた。
長年一緒に居れば、互いの事は読心術が使えなくても理解できる。真剣にリボーンが綱吉のことを想って行動してくれている事は解っていた。それ故に、綱吉はマフィアになるという選択肢を将来の視野に入れるようになり、リボーンに導かれるままに気が付いたらマフィアになっていた。
マフィアになったからといって、綱吉の日常が変わることは無かった。
親友の獄寺と山本が常に傍におり、時折、雲雀さんがちょっかいを出しに来る。了平さんは良くトレーニングをしに来ていたし、ランボも気が付くと遊びに来ていた。骸はさすがに監獄に居るため来たりはしないが、時折、クロームの報告で問題が無い事は分かっていた。
仕事だって血生臭い事は無かったし、時々起こる抗争も守護者同士の喧嘩に比べれば可愛いものだ。普段の書類仕事は結構骨が折れるが、それだって超直感を駆使すれば問題は無い。マフィアの生活も悪くない。そんなこんなで、綱吉はリボーンの事は信頼していたし、疑う事など無かった。
その日も、いつもと同じように仕事をしていた時であった。
「ツナ、ちょっとこの書類にサインを入れろ」
突然、執務室に入ってきたリボーンに驚きもせず、綱吉はその書類をよく見もせずにサインを入れた。リボーンが急ぎで片付けたい仕事の書類をこうして持ってくることは良くあったし、リボーンが目を通しているのなら今更綱吉が見る必要は無かったのだ。リボーンの機嫌がやけに良かったのは気になったが。
それから一週間何事も無く過ごしていた綱吉の元にリボーンが来た。
珍しくも白いスーツを着て。
「ツナ、結婚するぞ」
「は?イタリアは同性同士の結婚は禁止だよ?」
「問題無い。イタリアも同性婚は認められたからな」
目の前には、数枚の書類。
綱吉のサインと同性婚を認めるようにという文章と、それを基にした法王の許可証・イタリア政府の承認書だった。
ドンボンゴレともなると、こう言った事にも口が出せるようになるらしい。
「さて、式を挙げるぞ」
そう言って差し出されたリボーンの手を綱吉は取った。
リボーンの行動に間違いがあるはずが無いのだ。ならば、綱吉の幸せはリボーンの隣に有るのだろう。
疑う必要など無い。
綱吉は、重なったリボーンの手を握り締めると微笑んだ。
- 2008/10/14/00:46
- Novel
バレンタインの結果
バレンタイン話を上げれなかったので、ホワイトデー後日談を追加してUP。
日記に載せた時は、まだイタリアでは14日だったんだ…!
何でこんな事に。
それがこの日、綱吉の一番の感想となった。
バレンタインデー
それは、女の子が好きな相手にチョコレートと共に想いを告げられる日。
最近では“友チョコ”や、“逆チョコ”など女の子ばかりの日では無くなってきてはいるが、乙女の一大イベントに違いはない。
そのバレンタインの前日、綱吉が中学の頃からすっかり住み着いて居候どころか家族同然のイーピンやビアンキはもとより同級生の京子ちゃんやハルといった女性陣は、綱吉の家でチョコレート作りに余念がなかった。
彼女達からチョコレートを貰えるようになり、綱吉にとってもバレンタインデーは楽しみな日である。義理とはいえ、本命の京子ちゃんからバレンタインチョコを貰えるのだ。多少、ビアンキのポイズンクッキングで死にそうな目にあおうとも、某ご先祖関連や戦闘狂の先輩や世界制服を企む傍迷惑な隣町のパイナップル、更には意外に好戦的だった友人達のお陰で、日常的に死闘を繰り広げる羽目になっている身としては些細な運動にしかならない。
そんな訳で彼女達が無事、美味しそうなチョコレート菓子を作り終えて帰っていったのを見送った後、翌日を楽しみに機嫌良くイーピンやランボの相手をしていたのだが、ふとちょっとしたイタズラを思いついてしまった。
「かーさん、まだチョコレートって残ってたっけ?」
その一言が全ての始まりだった。
翌日の、バレンタインデー。今年は運悪く土曜日であったが、綱吉達の通う並盛高校は補習や課外授業などで学校に来ている生徒は多かった。
例により、何かとモテる獄寺君と山本の前にはチョコレートの山と男子生徒達の嫉妬の視線。
もちろん、綱吉も学校のマドンナ京子ちゃんからチョコレートを受け取った事で、クラス中の視線が突き刺さったが二人の比ではない。
因みに、京子からチョコを受け取った際の、女子の視線の意味に気付かない綱吉は、未だにダメツナ呼ばわりされているのは致し方ないだろう。
授業開始のチャイムが鳴り、超モテ組二人の前から女の子が引いた隙に綱吉は昨日準備したものを取り出した。
「獄寺君、山本。ちょと口開けて」
そう綱吉に言われ、素直に開けた二人の口にまあるい塊を放り込む。
その瞬間に拡がった特徴的な香りと優しい甘味にビックリした二人だが、口の中の物を吐き出すこともできず、かといって急いで飲み込むこともできずに目を見開かせた。
「モテモテの二人に、今日一番に俺の手作りチョコをプレゼント!」
そう言ってすぐさま自分の席に行ってしまった綱吉は、耳まで真っ赤になった二人を見る事は無かった。
例年、バレンタインの二人の様子を見てきた綱吉は、女子が二人を血眼になって追い回す、その一種異様な光景に同情を覚えても羨ましいと思ったことはなかった。だが綱吉も男だ。不特定多数からモテてみたいと、思ったことはある。
それを実現させちゃってる二人に対する意趣返しに、今年一番最初に口に入れるバレンタインのチョコが男の手作りという残念な事実と、日頃の感謝を込めてのチョコレートをプレゼントを兼ねた今回の行動であった。
二人にとっては残念なんて事は微塵もなかったが、一部の男子の憂さは晴れたようであった。もっとも、思いがけない綱吉からの手作りチョコレート(しかも、綱吉の手から口に運んで貰えたのだ)に舞い上がった二人には関係の無い事であった。
そのちょっとした思いつきを聞き付けた、意外と甘党の戦闘狂の風紀委員長とチョコレート好きのパイナップルに襲撃された(むろん、綱吉の手で二人の口に運ぶ事を強要された)事以外は概ね好評で、モテない男子一同にもおおいに歓迎された。
最終的には、綱吉手ずからチョコレートを食べさせて貰った獄寺君や山本、風紀委員長に隣町パイナップルから、頬を染めて「ホワイトデーは期待してろよ(な)」と言われ、その日を終えた綱吉であった。
上手くいった、ちょっとしたサプライズに機嫌良く家に帰った綱吉はそこで最大の過ちを侵してしまう。
優雅にエスプレッソを飲み、何人もの愛人を持つ家庭教師のリボーンにも、同じようにチョコレートを食べさせた後「ホワイトデー、期待してるからな」と言ってしまったのだ。
一瞬の後にニヤリと笑い「期待してろ」と男前に言い放ったリボーンが、普段は絶対に大人しく無防備に口を開けることなど無い事を綱吉は失念していた。
それから1ヶ月、報復も何もなかったのだ。忘れるなという方が無理である。
だが、無情にも約束の日は近づいてきていた。
13日の金曜日(!)を終え、日付が代わる直前に意識が途切れたと思ったら豪華な一室のダブルベッドの上にシルクのバスローブ一枚で寝かされていた。
卓上の電子時計を見ると14日の0時を少し回ったところであった。…たった数分で状況が一変するなどあり得ない。唯一思い当たる節は、一つしかない。
「気が付いたか?」
そう声を掛けられ振り向くと、これまたバスローブ姿の家庭教師様。想像していたが、想定できなかった状況に気が遠くなりかける。
だが、嫌な予感が綱吉に意識を保たせる。ここで気を抜けば後がない気がするのだ。しかし無情にも、綱吉の行為は意味をなさなかった。
「約束のホワイトデーだ。たっぷりネッチョリお返ししてやるぞ」
ちょうど、このイタリアじゃあ今からホワイトデーだしな、との言葉と共に首筋をウッソリとなぞり上げられた綱吉に抵抗する術は残されてなかった。
この日、リボーンの言葉通りにたっぷりネッチョリ“お返し”をされた綱吉は、その後友人達に手作りチョコレートを振る舞うことは無かったという。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
15日のAM3:00頃に「イタリアではまだ14日だ!!」とギリギリ投下した物を加筆修正。
・・・と言っても、あまり変わってませんが;;。
因みに、高校時代のツっ君は凡庸ながらも先生に鍛え上げられフェミニストな為、女の子に人気だと思います。でも、京子ちゃんが居るので誰も声をかけられないという(笑)。
あと、リボ様の“お返し”は皆様のご想像にお任せしますww。
- 2009/03/19/00:45
- Novel