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女性向き(BL等)、腐女子向け。『家庭教師ヒットマンREBORN!』の二次創作が中心です。

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  • 2024/05/19/00:24

『刺青師Ver.Mukuro and Hibari』ムクツナ ヒバツナ

『刺青師Ver.Mukuro and Hibari』 A5/オフ本 44P 500円 2010/10/11発行 18禁
表紙イラスト:高裏朝さま(クラリセージ) 

※18才未満(高校生不可)は購入できませんので、ご注意ください。
 


江戸の町が舞台の、某文学作品『刺青』パラレル。

刺青師・六道骸
彼には宿願があった。理想の相手に魂を込めた刺青を彫り込むこと。そして出逢う、淡い瞳と髪質の理想の青年に。

任侠者・雲雀恭弥
雲雀は新しく町にやってきてひっそりと暮らす青年・綱吉の気に掛けていた。彼との距離が縮まる内に綱吉が背負う物が見えてきて…。



刺青師ver.Mukuro and Hibari

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[刺青師 六道骸]


丁度、四年目の暑い夏の日のこと。

少なくなってきた顔料を買いに人通りの多い日本橋へ出た時のことであった。
目当ての顔料を得て店先をでた矢先、少しばかり強い風が吹いて向かいの店の前を通る、辻(つじ)駕籠(かご)の簾(すだれ)がハラリと捲(まく)れた。
着物から覗く白い肌に、色素の薄い髪と瞳。どこか遠くを見るようでその実、意志の隠(こも)った眼差しに背筋が粟立(あわだ)つ。

ほんの一瞬の邂逅。

彼にとってはそれだけで充分であった。常人よりも見通す右の赤い眼(まなこ)が、艶めかしくも白い肌に貝殻のような爪の光沢、柔らかなで軽い髪質に鳶色の濡れたようにきらめく目の力強さを見抜いていた。
この者こそが永年(ながねん)の宿願の相手だと解(わか)った。
それまで漠然と、だがしかし確とあった理想の相手が血肉を持った瞬間であった。

少年のように幼い顔付きをしていたが、眼差しから彼がそれなりの青年と呼んで差し障りのない年齢であるとわかる。美しい肌だけでなく、蜂蜜のように甘い容貌に相反する眼(まなこ)。彼が在るべき姿はこの様な場所、この様な居(い)姿(すがた)では無い。
純粋無垢な菩薩の顔をして、美しい爪で阿修羅のように男の身体を引き裂き、遊女のような細い足でその軀(むくろ)を踏みつける。

瞬く間にその光景を思い浮かび歓喜に満たされた。

ここで逃してなるものかと、直ぐさま駕籠の後を追うが人混みの多さに阻まれ適わなかった。
幾日も同じ場所へ赴き、更に日本橋の商屋街を渡り歩いたが再び出遭(であ)うことはなかった。
落胆しつつも諦める事は出来ずに、日々が過ぎていった。
そうして夏も終わり、秋の気配の訪れを感じるようになってきたある日の事であった。
彼が深川佐賀町の家居(いえ)にて暇をしていた時のことであった。夏の相手が忘れられずに誰の肌へも針を刺すことが出来ず、探す手立てもとうに費(つい)え日がな一日想い暮らしていた日の事。

一人の少年が六道の下を訪れた。
それは濃紺の呉服屋のお仕着せを着た、馴染みであった芸妓からの遣(つか)いであった。






[任侠者 雲雀恭弥]


その日の見回りを終え、雲雀が件の居酒屋に入ったのは暮れ六ツ(午後七時)の事であった。
もうそろそろ店を閉める時分であったが、雲雀の顔を見た見知った店主は何も言わずに酒と肴(さかな)を用意した。居酒屋と言えども、朝から営業しているため夜も早い。夜は蝋と油で明かりを灯すため、経費を浮かせるために早めに閉める意味があるのだろう。

蝋燭と吊(つる)し行灯(あんどん)が照らしてもなお薄暗い店内であったが、盛り時を過ぎたにしては些(いささ)か客が多かった。

普段なら酒と食事を終え、多くの者が住まいに帰るか遊びに繰り出すかしている時分である。公認遊郭である吉原は遠いが、非公認の岡場所は近隣にもある。
そういった色気のある話とは別に、新入りという者は身近な金の掛からない娯楽と話の種であった。そんな大概(たいがい)の客の視線を追えば、そこに一人の青年が居た。

「ツナ」と呼ばれるその青年は淡い色の髪に白い肌をしていた。別段美しいという訳でも無いが、珍しい色合いと男にしては細い身体が人目を引いた。

大店(おおだな)にでも仕えた事があるのか、丁重な物腰に田舎では滅多に見かけない良さがあった。袖(そで)を捲りくいと顎を上げる仕草にほんのり色香が漂(ただよ)い、なるほど噂になる訳だと納得する。
それだけで在ったのならば捨てて置いたのだが、店主の指示で酒と肴を持ってきた彼の瞳を見た瞬間に気に入った。

誰も側に寄せない孤独な目をしていたのだ。

その表情には甘さは一切無く、今にも溢(こぼ)れそうなそうな何かを内包して張り詰めさせていた。それが細い肢体(したい)と相まって男達の欲を刺激しているのだろう。
流行りの水茶屋とは違い、店主が彼自身を売り物とするような事は無いだろうが、間違いが起こって彼が傷つけられないとは限らない。
聞けばこの二階に仮住まいとの事であったため、柄にもなく親切心を起こした。
だが、部屋が空いているから来ればいいと言えば迷惑を掛けると断られ、機嫌を損ねた雲雀にトンファーを突きつけられても固辞した。

その心意気は買うが、雲雀の損ねた気分を浮上させる程のものではなかった。残りの酒を水のように煽(あお)り店を出た雲雀の後ろでは彼をたしなめる声が聞こえたが、諾(だく)と答える気配はついぞ無かった。

 

…続く

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