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女性向き(BL等)、腐女子向け。『家庭教師ヒットマンREBORN!』の二次創作が中心です。

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  • 2024/05/19/04:57

穂月さんから頂き亜mした


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Primavera


若々しい緑と色鮮やかな花々が春の息吹を感じさせるボンゴレの庭園に、一際目を惹く薄紅色。
風に揺られてひらひらと花弁を揺らせながら、咲き誇る満開の桜は、綱吉がイタリアに移ってすぐ無理を言って日本から取り寄せたものだった。
イタリアの土に馴染むかどうか分からないと庭師に言われていた桜は、当初の懸念を物ともせず順調に年輪を重ね、今では見事な花を付けて、この季節は庭でお花見パーティを開くのがボンゴレの恒例行事になっている。

澄み切った青空の下、ブルーシートに腰を下ろして楽しげに酒や料理に舌鼓を打つファミリー達の姿を眺めて日本にいるみたいだ、と綱吉は目を細めた。
目一杯枝を広げて春を告げる桜を見上げて仄かにワイン色の息を吐く。
慣れない土地で必死に根を張り命を繋ぎ、花を咲かせる桜の木に綱吉は自分を投影していた。
駄目かもしれないと言われていた桜も、今ではこのボンゴレの春の庭には欠かせない存在になっている。
イタリア、そしてボンゴレに日本の桜が受け入れられたことが綱吉は自分のことのように嬉しくて、つい口許が緩んでしまう。

「顔がだらしねぇぞ、ツナ。」

花見にぴったりな美しい色合いのロゼワインと賑やかな周りの雰囲気も手伝って、ふわふわとした気分だった綱吉に愉悦の滲んだ声が掛けられる。振り返れば、黒衣の集団にあって尚、鮮烈な印象を放つ漆黒の男が少し離れた所に佇んでいた。

「リボーン……。」

時折吹く風に飛ばされないようにか、ボルサリーノを目深に被り、鍔を押さえながらリボーンがゆっくりと綱吉の元へと歩いてくる。
青空と新緑を背に近づくリボーンに白にも見える薄紅色の桜がひらひらと降り注いでいた。
名を呟くと、俯き加減だった顔を上げ、艶やかな笑みを乗せて綱吉を見つめたリボーンに思わず見惚れてしまう。煩いくらいだった周りの喧騒が耳に届かなくなり、この場に二人きりのように感じられる。
リボーンが目の前までやって来ても、綱吉はかける言葉を見つけられなかった。
言葉なく、静かに二人の視線が絡み合う。
水の中にいるような息苦しさに、綱吉は知らず息を漏らした。

その瞬間、ざあっと大きく桜が撓り、舞い散る花弁が二人の周りを覆い尽くす。
桜色の洪水に思わず瞳を閉じた綱吉は、次いで口唇に感じたひやりとした感触にビクリと身体を震わせた。
薄く開いた隙間から入り込んだ熱が、あっという間に綱吉の心を絡め取って蕩けさせる。
堪らず漏れた声に満足したように、最後にわざとらしく音を立てて離れていくのを恨めしく思いながら綱吉が瞳を開けると、リボーンが間近で悪戯な笑みを湛えていた。

「一仕事終えた優秀なマーキュリーに褒美をくれてもいいだろう?」
「俺をヴィーナスだとでも言うつもり?」

頬を染めて不貞腐れたような顔をする綱吉に、リボーンは今度こそ声を上げて楽しげに笑った。
重なるようにわっと上がったファミリー達の喚声に、現実に引き戻された綱吉が仕方ないといった表情を浮かべる。グラスに注がれたワインを口に含んで、もう一度空を仰ぎ見た。
目の醒める様な蒼に、誇らしげに咲く仄かに紫がかった薄紅色がとても綺麗で、じわりと綱吉の視界が滲む。無言で頭に乗せられたボルサリーノから伝わる温もりが更に目頭を熱くさせて、「酔っ払いツナ」と呟いたリボーンの冷たい指先が綱吉の火照った頬を優しく拭った。
 

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