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『Riportare』リボツナ
表紙イラスト:佳寿さま「近未来レトロ」
リボ(LHR)ツナ吸血鬼パロ。
平凡な大学生・綱吉の生活は、恋人の京子を目の前で襲われた事で一変する。美しい、だが凶悪なその生き物に目を奪われ、抵抗する術も無く餌として彼の屋敷に捕われる。だが、そこで見たモノは…
中学の頃から京子に想いを寄せていたが、手を握る事も出来ず、想いを告げる事が適わなかった綱吉に、先に告白してきたのは京子の方であった。
真っ赤な顔をして、それでもしっかりと綱吉の顔を見上げた京子は、誰よりも綺麗な瞳をしていた。
ここで応えなければ、もう二度と機会は無い。
一世一代の決心で返事を返そうとした綱吉が見事にむせて、その場の空気を台無しにしたのは消したい記憶ナンバー1であった。
そんなスタートから早二ヶ月。
奥手な綱吉には、京子の手を握るのが精いっぱいであったが、順調に二人の仲は深まっていっていた。
将来は京子ちゃんと結婚出来たら。
そんな事を夢見つつも、帰宅を急いでいた綱吉の耳にか細い悲鳴が届いた。
微かな悲鳴。
だが、京子の声と確信した綱吉は、来た道を急いで引き返した。
最近、巷を騒がす通り魔事件を思い出す。被害者は皆、明るい髪の色をした若い女性で、これと言った外傷は無いが前後の記憶障害と極度の貧血でしばらくは起き上がることが難しく入院を余儀なくされていた。また、その事件に乗じて暴行事件も起っていたため、京子を家の近くまで送ったというのに。
間に合って欲しい。
その一心で、駆け付けた綱吉が目にした光景は異様なものであった。
奇跡のように美しい白い面に漆黒のスーツ。瞳だけがランランと黄金色に輝き光を放つ闇の化身のような男性。
その腕に抱えられ、力なく頭を垂れた京子の焦点は合っておらず、首筋からは一筋の赤いモノがつたっていた。
住宅街でありながら、その美しくも幻想的な光景に目を奪われそうになるが、感じた違和感により直に意識を戻した。
京子の足元に転がる、ラッピングされた小さな箱は、今日綱吉がプレゼントした物であった。その例を言う為に、引き返してきたのだろう。だが、悔やんでる暇は無い。怖気づく心を叱咤して、声を張り上げる。
「京子ちゃんを、離せ」
その時点で、ようやく綱吉を認識したらしい相手は、唇を弧の形に釣り上げると、あっさり京子を手放した。
慌てて、京子に駆け寄ろうとした瞬間、綱吉は視界が歪むのを感じて意識を手放した。